都道府県別日本矯正歯科学会認定医数
やたら長い、漢字だらけのタイトルでお送りします。
日本矯正歯科学会では認定医制度を設けています。
学会のホームページにはそれぞれの都道府県の認定医名簿も公開されています。
まだ大学で勤務医をしていた時にどこの都道府県が一番認定医が少ないのだろうかと思い、調べたことがありました。
当時は鳥取県が2人で一番少なかったのを覚えています。
それから数年が過ぎ、現在の状況はと名簿を眺めていると、どの都道府県もかなり増えています。
鳥取県は当時の2倍に増えていました(といっても都道府県別では最も少ないのですが)。
この都道府県別の認定医数、人口や歯学部の数で比較するとどうなるのだろうかと思い、表を作ってみました。人口のデータは2005年の人口を元にしています。
認定医一人あたりの人口がもっとも多い都道府県は青森県でした。
我が宮崎県は26位です。
全国平均は33位と34位の間で、認定医一人当たり4万8千人です。
もちろん、認定医一人あたりの人口が最も少ないのは東京です。
歯学部のある都道府県では認定医一人あたりの人口が少なくなる傾向にあります。
これから矯正で開業しようと思っている先生は、上位の県を考慮したほうが良いかもしれませんね。
作ってみてかなり面白かったので、他のデータ(県民所得など)とリンクさせたランキングも作ってみようと思います。
トレース
レントゲン写真には主に2つの使い方があるのではと思います。
一つには病的な状態があるのかないのかを見るため、
もう一つは大きさなどが適切かどうかをみるためです。
ある・なしを見極めるには撮影の条件をそろえる必要は少なくなりますが、大きさの比較するためには厳密に撮影の条件をそろえる必要が出ます。
この撮影条件を厳密に揃えたものが矯正でよく撮影されているセファロです。
このセファロ、私が矯正に残ったころはデジタル化されているものの、まだフィルムにして保存していました。
患者さんのデータの計測にはトレーシングペーパーを使って骨の形をなぞり、定規や分度器で手計測していました。
今ではどんどんフィルムレスになり、デジタルデータを直接モニター画面に表示するようになっています。
また、計測もモニター上で計測点をプロットすれば、計測プログラムが勝手に計測してくれるようになっています。
便利になってきているようにも思えますが、トレースもせず、計測点をプロットするのに心理的な抵抗があります。
そのため、面倒ですがドロー系のソフトでセファロをトレースし、その画像を計測プログラムに採り込んでいます。
このトレースの作業、マウスでモニターを眺めながらラインを引いているので、すごくストレスがかかります。
セファロを実物大に表示できるタブレット型のモニターに0.5mm程度のペン先で直接なぞるように入力できれば、昔のトレースのように正確で素早くラインが引けてるのですが、どこかのレントゲン器械の会社さん、出してくれませんかね。
地方都市の矯正歯科医の悩み
おはようございます。
日曜診療の振替で今日は休みにしています。
働くつもりはあるのかと怒られそうですね。
地方都市で開業している矯正歯科医には東京など大都市で開業している先生と違った悩みがあります。
数年以内に進学や就職で県外に出るという人が多いことです。
高校2,3年生や大学3,4年生ぐらいで相談に来る人の半数以上は県外に進学、就職希望の印象を受けます。
県内にいるあいだに矯正治療を始めておいて、転居したときには転医するということも頭にはよぎりますが、一人のドクターが最初から最後まで見るメリットが大きいので、ついつい行った先で矯正治療を始めてはいかがですかと言ってしまいます。
商売がへただなー
と思います。
そこで、昨日のどんと祭で枡を買い、お酒を頂いてきました。
益々繁盛と書いてありますが、そうなるといいですね。
社会人の7割近くが歯並びに自信がない
TPオーソドンティクスジャパンという会社があります。
私も利用させていただいている矯正用材料の会社です。
この企業が行った全国の社会人400名のアンケートで、
歯並びに自信がないひとが65.5%だったそうです。
この社会人の性別、年齢分布を詳しく見てみたいですが、
仮に偏りのない集団だったとすると、
社会人の3人に2人は自分の歯並びに自信がないということになります。
矯正治療経験者の話では、
気持が前向きになった
自然に笑えるようになった
など、心理的な改善が聞かれます。
この厳しい雇用情勢を考えると、自分に少しでも自信が持て、行動が積極的になることは社会人にとってプラスになるとおもいます。
社会人としての能力的なスキルアップと同じように、心理的な改善も目指してみてはいかがでしょうか。
咬合力と運動能力
8020推進財団という組織が
歯を大切にしてスポーツを楽しく
という冊子を発行しています。
その冊子の中に先日ブログで書いた咬合力についての記事がありました。
「運動能力が高い小学生は噛む力も強い」
という記事です。
小学生を対象にしたデータで、咬合力の高い児童の方が懸垂や50m走の記録も優れているというものです。
先日書いたとおり、咬合力は歯並びや咬み合わせに密接に関連しています。
歯並びやかみ合わせを整えることで運動能力が向上が期待できるかもしれません。
日本スポーツ歯科医学会での発表で、プロやアマチュアスポーツのレギュラークラスと控えの選手の口の中の状態を比較したものがあります。
レギュラークラスの選手は控えの選手に比べ虫歯が少なく、咬み合わせも良い人が多いです。
また、レギュラークラスの選手はまめにお口の管理を受けているようです。
将来プロスポーツ選手を目指す人、長くスポーツを楽しみたい人は、定期的なお口の管理とかみ合わせの治療を検討してみてはいかがでしょうか。
顔面写真の撮影
私の歯科医院では、矯正治療を開始される方すべてに治療計画書を渡しています。
矯正治療では治療計画を立てるときに顔面写真を撮るのが必須です。
普通に顔面写真を撮っていると、被写体の大きさがバラバラになる恐れがあり、後で治療前治療後の顔の変化の比較をするのに困ります。
証明書用の写真を撮るように、カメラと被写体の距離を規格化したいと思っていました。
そこで、歯科医院の設計のときにお願いして顔面写真専用の区画を作ってもらいました。
椅子の位置とカメラの距離が一定になり、フラッシュが被写体の後ろにも回りこむので、後ろに影ができず、気に入っています。
矯正治療中のスポーツ外傷
以前、前歯が出ているとスポーツでケガしやすいという話を書きました。
今回は矯正治療中のスポーツのケガの話です。
矯正治療では歯の表面にブラケットをつけることが多いです。
多くのケースでは歯の外側のくちびるや頬と接する面にブラケットがついています。
ブラケットの角はできるだけ滑らかに作っていますが、不意の衝撃でくちびるや頬を切る場合があります。
1998年に出された高校生のクラブ活動での口のケガに関する論文で、
矯正治療中の生徒では口のケガが多くなると発表されています。
これはサッカー、レスリング、バスケットボールの選手を対象とした論文です。
レスリングでケガが増えるのは想像に難しくないのですが、サッカーやバスケットボールなど選手同士が接触する可能性のあるスポーツでも高くなっています。
このことから、他のスポーツでも選手同士が接触する可能性のあるスポーツでは矯正治療中の選手は口のケガをしやすいと考えられます。
口のケガが矯正装置で増えるなら、その矯正装置をマウスガードでカバーすれば口のケガの予防は可能です。
矯正治療中のスポーツ選手はなるべくマウスガードを装着してください。
矯正治療をいつ始めるか
本日は日曜、定休日です。
宮崎市はくもり。
寒い朝です。
いつもの定休日は矯正関連の記事は書かないのですが、矯正治療をいつ始めるかということについて書いていきます。
患者さんご本人や家族の方に「矯正治療はいつ始めたら良いのですか」とよく聞かれます。
すべてのケースに当てはまる答えとしては、「それぞれのケースによって異なるので、一度矯正歯科医にご相談ください。」となります。
ではなぜそれぞれのケースで異なるのでしょうか?
矯正歯科医が治療計画を考えるときに、
・顔の骨格に異常がないかどうか
・歯の生え方や傾きに異常があって、咬むたびにあごがずれていないかどうか
・歯とあごの大きさが整っているかどうか
・かみ合わせに悪影響を与える癖がないかどうか
・歯の形に異常がないかどうか
・歯の数に異常がないかどうか
・顔の成長や歯に異常をきたす病気を持っていないかどうか
・成長期かどうか、いつまで成長するか
・歯の生え変わりはいつか
などの患者さんの体の問題と、
・進学や就職はいつごろか、仕事の予定はどうか
・引越しの予定があるかどうか
などの患者さんの社会環境の問題など、
様々な要素を組み合わせて考えています。
同じようなかみ合わせでも、上に挙げた要素が異なれば違った治療計画になります。
矯正治療は長期間の治療になります。
体の問題だけで治療計画を立てると、治療の継続に無理が生じ、患者さんの来院が滞る恐れがあります。
また、転居の予定を考慮せずに治療を開始すると、転医が必要となり、無駄な出費を強いる可能性や、治療期間が長くなる可能性が出てきます。
体の問題の把握、社会的背景の聞き取りには少し時間がかかります。
中にはすぐに矯正治療を始めたほうが良く、時期を逸すると治療が困難になるケースもあります。
そのため、「矯正治療はいつ始めればよいか」と疑問に思われたときは、
個々のケースで異なるので、できればすぐに矯正歯科医に一度ご相談ください。
口の周囲の筋肉のトレーニング
普段口をあけているひとは口の周囲の筋肉がうまく働いていないことが多いです。
そのようなひとは表情が乏しくなり、暗い印象を与えます。
今回はくちびると口の周囲の筋肉のトレーニングです。
くちびるの筋肉と口の周囲の筋肉は密接に関連しています。
くちびるの筋肉だけでなく、表情の筋肉を鍛えることでくちびるの機能はより向上します。
1. リップマッサージ
最初に口をかるく開けて、鼻の下を伸ばします。このとき、上くちびるで上の前歯を内側へ強く押しこむように伸ばしてください。
次に、下くちびるを上くちびるの上に大きくかぶせます。
このとき、下の歯で上くちびるを咬まないように注意してください。あくまでも下くちびるだけかぶせてください。
大きくかぶせた下唇をゆっくり下げていきます。
このとき、なるべく下くちびるで上くちびるを強くこするようにしてください。
これを10回繰り返します。
2. 上くちびるのトレーニング1
口を大きく開けて、下くちびるをゆびで押しさげます。
上くちびる(鼻の下)はできるだけ下に伸ばしてください。
この状態で、10秒間維持します。
これを5回繰り返してください。
3. 上くちびるのトレーニング2
口を大きく開けて、人差し指を鼻の下にあてます。
上くちびる(鼻の下)をゆっくりと人差し指でこすりながら下に伸ばします。
10数えるぐらいのスピードで下に伸ばしてください。
これを5回繰り返してください。
1.2.3.のトレーニングは、上の前歯が前に出ているひとに対するトレーニングとして特に効果があります。
上の前歯が出ているひとは上のくちびるが緩んでいて、上に反り返っています。
このトレーニングで反り返りを取り除きましょう。
4. 表情筋のトレーニング
鏡を見ながらトレーニングします。
鏡を見ながらイーと発音してください。
このとき、口の角はできるかぎる斜め上に引き上げるようにしてください。
写真のように、口の角があまり上がらない場合は、指をかるく添えて持ち上げてください。
持ち上がったら、指をはずし、その表情を数秒間維持してください。
次にくちびるをすぼめて突き出し、ウーと発音してください。
これを10回繰り返します。
このトレーニングではイーの発音時、ウーの発音時の表情をできるだけおおげさにするようにしてください。
やればやるほど表情の筋肉がトレーニングされ、きれいな笑顔を作れるのみならず、口の周りの血行が促進されます。
形状記憶合金
形状記憶合金のお話です。
形状記憶合金という言葉はご存知でしょうか。
Wikipediaによると、「ある温度(変態点)以下で変形しても、その温度以上に加熱すると、元の形状に回復する性質を持った合金」とされています。
この合金は矯正治療でよく使われていて、
昔の矯正治療より痛みが少なくなってきたのは、この材料の使用とその使い方の進歩によるものです。
上の写真に使用しているワイヤーは形状記憶合金の表面を白くコーティングしたワイヤーです。
上下に入っているワイヤーがまっすぐではなく、たわんでいるのがお分かりでしょうか。
マルチブラケット治療の開始当初は、ほとんどの人はどこかに歯のねじれや隣の歯とのずれなどがあり、まっすぐで硬いワイヤーを入れることが困難です。
こういうときに形状記憶合金製のワイヤーを入れます。
形状記憶合金のワイヤーは、室温ではやわらかく、変形しやすいように調整されています。
そのため口を開けてワイヤーを入れ、ワイヤーを歯に縛り付けるまでは歯のがたがたに合わせてワイヤーが変形します。
そこから口を閉じて、ワイヤーの温度が体温近くまで上昇すると、ワイヤーに組み込まれている元の形の戻ろうとする作用によって歯が動くのです。
この形状記憶合金製のワイヤーを使うたびに、最初にこのような形状記憶の性質を発見した人や、最初にこの合金を矯正治療に使用することを考えた人はすごいなと思っています。