幼児の乳歯の外傷
小さいお子さんはすぐにこけます。
こけたときに前歯をぶつけることが少なくありません。
私も幼児期に顔からこけて上の乳歯2本抜歯になりました。
今回は子供の乳歯の外傷後の問題について書いていきます。
まだ永久歯の生えてこない小さいお子さんが乳歯をぶつけたとき、抜歯したり、隣の歯と固定したり、そのまま様子をみたりなどなど、
けがの状況に応じて一番適切な処置が行われます。
小さい子供のけがなので、患児、保護者ともに大変なストレスでしょう。
処置が終わるとほっとされると思いますが、あとで問題が出てくる場合があります。
乳歯の外傷によって、時に次に生えてくるはずの永久歯がなかなか生えてこないことがあります。
そういうときに多いのが、永久歯の向きが変わっていることです。
上のレントゲンは断層写真で、本来生えてくるはずの永久歯が生えないために来院した患者さんのものです。
この患者さんは以前に乳歯をぶつけて抜歯になっていました。
レントゲン写真では歯が1本だけ他の歯の方向と90度回転しています。
こういった場合、矯正治療で歯を並べることができるケースもありますが、多くは抜歯になります。
乳歯をぶつけたことのある子供のご両親はできれば1年に1回でも歯科医院でレントゲンを撮り、次に生えてくる永久歯の状態を確認されることをおすすめします。
身長計
成長期の患者さんの矯正治療中では定期的に身長を測ります。
身長を測るときに身長計が必要になるのですが、学校の健診などで使用される身長計は場所をとり、また結構高価です。
開業前にネットで安くて場所をとらない身長計を探し、見つけたのがこれです。
床に置くのではなく、上から降ろしていくという造りなので場所をとりません。
難点はメジャータイプなので滑りが悪く、計測時に頭が当たるか当たらないかというところで微妙に動かす時に苦労します。
微調整の時にハンドルか何かでわずかに上下できるようになっているともう少し使い回しがいいかなと思っています。
咀嚼筋
今日はプチネタです。
食べ物を咬む時に使う筋肉を咀嚼筋(そしゃくきん)と言います。
咀嚼筋には咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋、顎二腹筋などがあり。
この咀嚼筋は食べ方が悪いとうまく機能せず、成長期に悪い状態のままでいると顎の骨や顔の形に影響してきます。
特にみなさんがチェックしやすい部分でいうと、あごのえらの部分の咬筋、こめかみの部分の側頭筋の1部分、耳の上の側頭筋の1部分をそれぞれ左右同時に触ってみてください。
触った状態で奥歯で噛みしめてください。
このときに筋肉が膨らむのが感じられたでしょうか?
あまり感じられなければその筋肉はうまく機能していません。
また、左右で筋肉が膨らむのが同時でなかったり、膨らみ方に左右差がある場合は、左右均等に使えていない状態です。
普段の食事のとり方、咬み方が適切であるかどうか簡単なチェックで確かめることができますので、一度お試しください。
技工
おはようございます。
今日は朝一で役所に行った後、定休日なのに歯科医院に来て技工をしています。
通常、歯科の修復物、補綴物、装置は技工士さんに作ってもらうのですが、
今のところ時間に余裕があるので私の歯科医院ではすべて自分で技工しています。
このあと形を整えて、つるつるに研磨して完成です。
あと1時間ほどはかかりそうです。
いつ矯正治療を始めるかの認識について
先日手元に届いた日本矯正歯科学会の学会誌の論文、
「矯正歯科治療後における患者および保護者へのアンケート調査」から。
松本歯科大学で矯正治療をした121名の患者さんと保護者に対するアンケートによると、
全体の46.3%が中学に入学する前に矯正歯科への通院を開始しています。
振り返って、今考えるといつ通院を開始したら良かったかという質問に対しては、
小学3~4年頃が25.6%、小学5~6年頃が24%で、中学入学前に開始すれば良かったと考える方が64.5%になっています。
実際に矯正歯科に通院し始めた時期よりも、あとで考えてみるともっと早くに始めれば良かったと思っているようです。
また、治療が終了した時期は、
中学が21.5%、高校が26.4%、大学が16.5%、大学以降が23.1%でした。
いつ頃治療が終了していれば良かったかを尋ねた質問では、
中学入学前が10.7%、中学が31.4%、高校が29.8%、大学が7.4%だったそうです。
実際に治療が終了した時期より、もっと早く治療が終了していれば良かったと考えてるようですね。
以上から、
多くの患者さんが、
「もっと早くに矯正歯科に行っていれば、もっと早いうちに治療が終わったかも」と考えているのかもしれません。
裏側からの矯正治療 3
裏側からの矯正治療の3回目です。
2回目では表側からの矯正治療と裏側からの矯正治療のメリット、デメリットについて書きました。
この一連の記事を読んでいる人の中には、裏側からの矯正治療をしてみたいと考えている人もいらっしゃると思います。
今回は裏側からの矯正治療でデメリットの中にあげた、治療がかなり難しいケースについて書きたいと思います。
①骨格的に大きくずれているケース
骨格的に大きくずれている場合、手術適用となることが多いですが、裏側からの矯正治療は保険適用になりません。
②歯の長さが短い
裏側からの矯正治療は表側の矯正治療にくらべてブラケットを付けることができる範囲が狭いです。
そのため、歯の長さが短くブラケットをつける場所がないケースではつけられません。
以上が裏側からの矯正治療が困難なケースとなります。
その他にも治療期間が長くなりがちなケースが存在しますが、治療技術の進歩によりかなりのケースが治療可能になってきています。
裏側からの矯正治療 2
裏側からの矯正治療の2回目です。
ある患者さんの治療についていくつかの治療方法の選択肢がある場合、それぞれの治療方法を比較するとメリット、デメリットというものが出てきます。
医療従事者はそのメリット・デメリットをよく吟味した上で、最善と考えられる治療方法を説明します。
また、メリット・デメリットを比較したときに最善と考えられる治療方法と、次善と考えられる治療方法の差が少ない場合、両案を提示した上でそれぞれのメリット・デメリットを詳しく説明し、患者さんに治療方法を選択してもらうことになります。
裏側からの矯正治療の場合は表側からの矯正治療との比較となります。
裏側からの矯正治療と表側からの矯正治療のメリット・デメリットについて比較してみましょう。
表側からの矯正治療
メリット
ほとんどのケースで治療可能
治療後の仕上がりが良い
1回あたりの診療時間が短い
発音や舌の動きが制限されにくい
裏側からの矯正治療より治療費が安い
裏側からの矯正治療より治療期間が短くなることが多い
歯磨きが裏側より容易
デメリット
装置が他人の目に付きやすい(審美ブラケットを使用すれば目に付きやすさは軽減される)
接客を主とする職業についている場合、表側からの矯正治療が禁止されている場合がある
顔をぶつけた時に唇の裏や頬をケガしやすい
食後しっかり手入れしないと食べカスが見える
裏側からの矯正治療
メリット
装置が他人の目に付きにくい
接客を主とする職業で表側からの矯正治療が禁止されている職場でも、裏側からの矯正治療については許可される場合がある
ケースによっては表側よりも簡単になることがある
デメリット
裏側からでは治療ができない、治療が困難というケースが多く存在する
話しにくい、舌の動きが制限される
舌に口内炎をつくりやすい
治療期間が長い
1回あたりの診療時間が長い
治療費が表側より高額
治療の仕上がりが表側より劣ることが多い
食べカスや磨き残しが残りやすい
このように比較すると裏側からの矯正治療の方がデメリットが多くなります。
しかし、裏側からの矯正治療には外から見えにくいという大きなメリットがあるため、子のメリットを何よりも重視される患者さんにとっては最適な治療方法と考えられます。
永久歯先天欠如
今朝の宮崎日日新聞の記事から、
永久歯欠損 10人に1人
小児歯科学会が調査
かみ合わせに悪影響 専門医不足
28本の永久歯のうち、1~数本が何らかの原因により作られず、欠損している「先天欠如」の子供が10人に1人いることが、日本小児歯科学会の初の全国調査で5日、分かった。
全部が生えそろわないと、かみ合わせの異常など、さまざまな悪影響が出る可能性がある。担当した山崎要一鹿児島大教授(小児歯科学)は「かなり多い数だ。治療の多くは自費診療が必要な上、治療ができる専門の歯科医師の数も少なく、大きな問題だと考えている」と話している。
2007~08年に、先天欠如以外の理由で歯科を受診した本県など12都道府県の7歳以上の子供1万5544人を調査。先天欠如は1568人(10.1%)で見つかった。
男子では9.1%、女子では11.0%だった。
上顎だけに欠損がある子は2.5%、下顎だけは5.7%、両方は1.9%。下顎で中央から左右に向かって5本目にある第2小臼歯がないケースが最多で、2本目の側切歯がない子どもも多かった。
7歳の段階でエックス線写真でも永久歯の芽(歯胚)が確認されないと、約99%の確立で欠如するとされる。乳歯は普通に生えていることが多い。
永久歯の先天欠如は原因不明のため、予防はできない。かみ合わせを正常にするため、歯並びを整えたり、インプラント(人工歯根)治療をしたりするなど、かなり専門的な治療が必要になるという。
山崎教授は「全国に歯科の病院は6万ほどあるが、きちんと対応できるのは数千程度。学会のホームページで紹介する専門医か矯正歯科医に相談してほしい」と話している。
とあります。
下の歯は上の記事にあるように、前から2番目と5番目の歯がない人がいます。
上の歯の先天欠如は下の歯の先天欠如より少ないですが、下の歯の場合と同じように前から2番目と5番目の歯がない人がいます。
上の前から2番目5番目の歯は、正常な大きさにくらべ小さい人が多く、特に2番目の歯が細くとがった歯になっている人はかなりの数にのぼります。
前から5番目の歯の場合、永久歯が先天欠如していると乳歯の歯根が吸収されないため、乳歯が長く残っていることが多いです。
そのため、大人になっても永久歯が先天的に欠如していることを知らない人がいます。
5番目の歯の場合、虫歯などによって抜歯する以外は長く残っているため、脱落したあと隙間をどうするかの対応が必要となります。
奥歯なので、ブリッジにするか、インプラントを打つかの対応となることが多いと思います。
前から2番目に歯の場合、生え変わりの時期に脱落することが多く、なかなか次の歯が生えてこないということで気づかれることが多いです。
前から2番目の欠如はかみ合わせがおかしくなることが多く、少ない歯の数でかみ合わせをまとめるにはかなり専門的な知識や技量が要求されます。
正常な歯の数と配列は親知らずを含めずに考えると右上の奥から、
第2大臼歯、第1大臼歯、第2小臼歯、第1小臼歯、犬歯(糸切り歯)、側切歯、中切歯、中切歯、側切歯、犬歯(糸切り歯)、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯の順になっていて、
上あごの歯が14本、下あごのには14本の歯があります。
親知らずが4本すべてある人では全部で32本の歯があるでしょう。
一度ご自身やご家族の歯がすべてそろっているか確かめてみてください。
歯の数が少ない場合は先天欠如か埋伏歯の可能性があります。
また、第1小臼歯と第2小臼歯は本来は歯の形が似ています。
もし前から4番目と5番目の歯の形が大きく異なっている場合、第2小臼歯が欠如していて第2乳臼歯が残っている可能性があります。
そのような場合は是非矯正治療に力を入れている医療機関にご相談ください。
裏側からの矯正治療 1.
裏側からの矯正治療というと、みなさんが想像するのは舌側矯正や裏側矯正と呼ばれているブラケットを用いた矯正治療だと思います。
しかし、歯の外側から見えない矯正治療というカテゴリーで考えるなら、リンガルアーチや床矯正装置などもその部類に入るでしょう。
余談は置いて、
今日は裏側にブラケットをつける矯正治療の話を書きます。
最近、裏側にブラケットをつけて矯正治療をされる方がどんどん増えています。
一般の人たちからみれば、裏側からの矯正治療は最近始まった最新の矯正治療のように思えるかもしれません。
実は最初の裏側にブラケットをつける矯正治療は1970年代に日本で開発されました。
当初は治療方法が難しく、治療期間も長くなりがちだったためあまり普及しませんでした。
しかし、裏側からの矯正治療を継続し、長年に渡って治療方法の研究や材料の研究がなされていました。
現在では、ブラケットや治療方法がどんどん改善され、今では裏側からの矯正治療を行う歯科医院はかなりの数になっています。
続きます。
ユニット
歯科で患者さんを治療するときに座ってもらうイスをユニットと呼びます。
ユニットはいろいろなメーカーが出していて、
安いもので100万円台から、
高級なものになると1000万円台なるものもあります。
このユニットなのですが、私の歯科医院では3台入れいています。
矯正歯科の場合、歯を削ったりすることは少なく、治療によってはユニットがただ水平になってくれれば良い場合も多々あります。
そこで、1台は一般歯科診療でも使えるユニット、あと2台は水平になるだけのユニットを入れようと考えました。
水平になるだけのユニットというのがなかなか難しく、気分的には美容室にあるようなユニットを使うことで器材の導入コストを削減したかったのですが、診療に使うので薬事法に適ったものしか使えません。
薬事が通っていて、水平になるだけのユニットという条件で1つだけ見つけることができました。
タカラベルモント製のフェリエというユニットです。
タカラベルモントのホームページより
このユニットを購入する際に、無理を言って黒のレザーを貼ってもらいました。
昔、耳鼻科においてあったようなユニットになってしまいました。
ドクター用のチェアも黒です。
統一感を持たせるために、一般歯科診療でも使えるユニットにも黒を貼ってもらいました。
白やパステルカラーのユニットより汚れが目立ちにくく、少し歯科医院らしくない雰囲気が気に入っています。
ちなみに世の中にはポルシェデザインのユニットもあります。
これ一台で私の歯科医院のユニットすべてが買えます。