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2010.12.08

癖と歯列不正 6.片方の奥歯で咬む癖

片側の奥歯ばっかりで咬む癖、片咀嚼についてです。

成長期の子供が咬みやすい方の歯だけで咬んでいると、あごの発育に左右差が出ます。

あごの骨は、体の骨の中ではかなり特殊で、右側と左側に一つずつ関節があります。

腕の場合、右きき、左ききがあるように、片方だけをよく使っていてもあまり不都合が出ませんが、

あごの場合、片方の奥歯だけで咬んでいると、あごの関節の形、あごの骨の形、咬む筋肉の機能、あごの動かし方などに左右差が現れてきます。

左で咬んでいると、上の図にあるように、右の関節が前に動き、左の関節は右ほど動きません。

あごの先は左の方にずれて動きます。

左で咬み続けると、あごを左にずらしたときのあごの形に対応しするため、あごの骨は左側より右側が大きくなってきます。

その結果、顔は非対称になり、上と下の歯もずれて咬むようになります。

あごの発育は、両方の奥歯を同じぐらい使って咬むことで正しく発育します。

両方の奥歯を均等に使う一番いい方法は、咬む回数を増やすことです。

流しの飲みや早食いをせず、良く咬んで食べれば、必然的に両方の奥歯で咬むようになります。

なぜなら、片方だけでよく咬むとあごが必ず疲れますから。

2010.12.07

癖と歯列不正 5.指しゃぶり

歯並びに影響を与える癖の定番、

指しゃぶりです。

医歯薬出版 カラーアトラス歯科矯正診断学から引用

指しゃぶりは幼児ではごくありふれた癖です。

一般的には小学校入学ごろに自然に無くなることが多いですが、それ以後も継続する子供もいます。

長期間継続すると上の写真のレントゲンにあるように、上の前歯は上に持ち上げられながら、前に飛び出し、下の前歯は下に押し下げられます。

骨格的にも、上あごの前の方はあまり下方向に発育せず、上あごの後ろの方のみ下方向に発育します。つまり、上あごは前と後ろで発育の不調和が生じ、上あごの形が悪くなるのです。

長期間指しゃぶりをしている子供では、親指に歯が当たることでできたタコが見られることが多いです。

指しゃぶりの除去についてはいろいろな考えがあり、矯正歯科医、小児歯科医、児童心理学者で色々意見が分かれています。

指しゃぶりは歯並びに影響するので積極的(指に薬やからしを塗るなど)にやめさせた方が良い。

積極的にやめさせると子供の心理に悪影響を与えるのでよくない。

学童期になればやめる子が多いので、それまでは様子を見る。

なるべく早くやめさせた方が良い。

無理にやめさせると他の癖に置き換わる。

無理にやめさせると隠れて指しゃぶりをする。

など・・・

私の意見は、上のどれも正解であり、すべての子供に一様の対応をすることが間違っていると思っています。

子供の家庭環境や、心理的背景、骨格形態、歯列形態は様々です。

それぞれの子供に応じた対応が必要なのではないでしょうか。

2010.12.06

癖と歯列不正 4.猫背

今日は猫背の話です。

 

猫背と咬み合わせが関係あるの?

と聞かれそうですが、実は関係しています。

上の写真は私のものです。

私は猫背で、右が普通に座っている写真、右が背筋を伸ばした写真です。

猫背の状態では体の中心よりも頭が前に出ています。

このことから英語で猫背をForward head postureといいます。

普通、首が前に傾斜し、頭が前に位置すると顔は下を向きます。

しかし、猫背の人はその状態で前を見るので、首の前の部分がつっぱります。

上の右の写真のように、猫背で前を見ると(頭を上に向けると)、あごが筋肉によって後下方に引っ張られます(青の矢印方向)。

小さいころから姿勢が悪く、常に猫背で椅子に座っていると、下あごは筋肉によって後下方に引っ張られ続けるのです。

その結果、下あごの前への成長は阻害され、上顎前突(出っ歯やあごが下がった状態)になります。

私がそうです。

大人になるとあごは成長しないので、

子供のうちから姿勢を整えて座る習慣を付けることが大変重要です

下あごがないと、見た目もさることながら、太るといびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群のリスクもあがります。血圧も上がりやすくなります。

姿勢を正して座るように心がけましょう。

2010.12.05

癖と歯列不正 3.くちびるを咬む癖

くちびるを咬む癖があると歯並びは悪くなります。

下の写真は下くちびるを咬んでいる写真です。

下くちびるを咬んでいると、上の前歯は前に倒れ、下の前歯は内側に倒れます。

こうなると、常に下くちびるが上の歯と下の歯の間に挟まりやすくなります。

成長期の子供だと、下あごの成長が悪くなる可能性もあります。

2010.12.04

癖と歯列不正 2.唇や頬の力

歯は力のバランスのつりあった所に並びます。

歯に加わる力で、外から中へ向かう力が強く、中から外へ向かう力が弱い時、歯は内側に倒れます。

代表的なものを挙げると、

飲み込む時に頬がキュッとしまるような癖を持っている人です。

このとき、奥歯には内側に移動しやすく、歯並びの横幅(歯列弓幅径)がせまくなります。

 

 

逆に、歯に加わる力で、中から外へ向かう力が強く、外から中へ向かう力が弱い時、歯は外側に倒れます。

代表的なものを挙げると、

口をぽかーんと開けていることが多い人です。

このとき、前歯を内側に押すはずの唇の力が作用せず、上の前歯が前に倒れます。

これらの癖は矯正治療をして歯並びを整えても後戻りをさせる力になります。

なるべく早く取り除いた方が良いでしょう。

2010.12.03

癖と歯列不正 1.飲み込む時の癖

口の周りの色々な癖が歯並びに悪影響を与えることがあります。

その代表のようなものが飲み込む時の癖です。

正しく飲み込める人は下の図のように、

食べ物を舌の上に集め、舌の先の部分は上の歯の裏側付近で天井(口蓋)に付いています。

そして、食べ物は舌の上を移動し、

食道へ送られます。

この間、舌の先は上に付いたままです。

しかし、中にはこのように飲み込むことができず、舌の先が上の歯の裏側で口蓋に付かない人がいます。

そのような人の多くは、下の前歯の裏側に舌の先があったり、

上の歯と下の歯の間に舌を挟む人もいます。

舌が上に付かない人では上の歯並びが狭くなったり、舌を上の歯と下の歯の間に挟む人は前歯が咬まなくなります。

舌が口蓋に付かない飲み込み方は、乳児に特徴的な飲み込み方で、成長するにつれて正常な飲み込み方に変わります。

しかし、成人でも正しい飲み込み方が出来ていない人がたくさんいます。

歯並びの悪い人の中に正しい飲み込み方が出来ていない人が多いです。

正しい飲み込み方は治療後の矯正治療の安定にもつながります。

一度、自分がどのように飲み込んでいるか、確認してみてはいかがでしょうか。

2010.12.02

手のレントゲンとあごの骨の成長

成長期の患者さんの治療計画を考えるときに、あごの骨がいつまで成長するかということが問題になります。

たとえば、反対咬合(受け口)の患者さんであごの骨の成長が続く場合、最終的に咬み合わせを整える治療はあごの成長が落ち着いてからになります。

それまではあごの成長のコントロールを行ったり、場合によっては成長が終わるのを経過観察する場合もあります。

あごの成長のコントロールも、比較的低年齢では効果的ですが、小学校高学年になるとあまり効果的ではなくなってきます。

治療開始の時期の決定、治療効果の見通しなどにあごの成長の予測が密接に係わってくるのです。

このあごの成長の予測は身長の伸びのグラフなども用いるのですが、

他に手のレントゲンで予測を行ったりします。

これは幼児(私の下の娘)の手のレントゲンです。

小さな子供では手の付け根の骨の数は少ないです。

この状態からどんどん成長すると、このようなレントゲンになります。

思春期前になるとこの状態になり、幼児に比べ手の骨の数が多くなります。

成長期なので、手の骨には軟骨がたくさん存在し、骨の端と骨の幹の部分がくっついていない状態です。

このあと、思春期性の成長が大きくなると親指の付け根に小さな丸い骨ができ、手首の骨にカギ(鉤)ができます。

思春期性の成長が終わるころになると、軟骨が骨に置き換わり、骨の端と骨の幹の部分がくっついて1本の骨になります。

ほとんどの骨がくっつくころにはあごの骨の成長もほぼ終わります。

大人の手のレントゲンがこれです。

このように、矯正歯科医は手のレントゲンを撮って、

親指の付け根の骨ができてないから、まだまだあごが大きくなるねとか、

手首の骨の軟骨がほとんどなくなってほぼ1本の骨になっているから、もう少しであごの成長が終わるねとか、

予想をつけています。

2010.11.30

外科的矯正治療 補足 顔のバランスについて

昨日の朝、NHK総合のアサイチで顔の話をしていました。

そういえば、外科的矯正治療のシリーズで顔のバランスも考慮して治療計画を考えていることを書いていませんでした。

そこで補足です。

ひとにはそれぞれ好みの顔があります。

好みのど真ん中という顔は、すべてのひとで一致しているわけではありません。

しかし、ひとそれぞれ好みの顔には範囲を持っているもので、

ほとんどのひとにとって好みの顔の範囲に入る顔というものがあります。

バランスの整った平均的な顔になってしまうのですが、

これをいろんなひとの顔をブレンドして自分でも作ってみました。

目、鼻、口、あごの先の位置を整えて作っています。

整った顔のバランスは、

眉間から鼻の下、鼻の下からあごの先が1対1、

鼻の下から口、口からあごの先が1対2、

とされています。

骨格的な異常のある患者さんの治療計画を考える上で、骨格的な異常を改善するだけでなく、顔のバランスも上の写真の比率に近づくように計画しています。

そうすると、治療後の患者さんの顔は魅力的になり、患者さんからも満足が得られます。

2010.11.28

外科的矯正治療 9.保定、経過観察

外科的矯正治療を行った患者さんも、通常、保定を行います。

この保定を開始する時も、治療開始時、手術直前と同じ検査が必要になります。

この期間中にどんどん咬めるようになり、保定終了の頃には治療開始する前より、咬む効率、咬む力などが格段に良くなっています。

保定を行う期間は患者さんによって様々です。

保定終了後は定期的に経過観察を行います。

2010.11.28

外科的矯正治療 8.術後矯正治療

退院後、かみ合わせの仕上げを行っていきます。

手術が終わって、咬みあわせがばっちりで、骨の後戻りもほとんどない場合もありますが、

大部分では少しかみ合わせの修正が必要なことが多いです。

また、手術後数ヶ月間はあごの骨が筋肉の力で元の位置に戻ろうとするので、それを防ぐためにゴムやチンキャップなどであごの位置をコントロールします。

その他、顎変形症の患者さんの場合、歯並びに悪影響を及ぼす癖を持っている人が多く、手術前に癖の除去ができていないことが多いため、この時期に確実に癖の除去を行うようにします。

かみ合わせの修正を行い、

悪い癖が取り除かれ、

あごの位置がコントロールされ、

あごの骨の後戻りがある程度ない状態になってから

矯正装置を撤去します。

治療開始・手術直前・矯正装置撤去の横顔の比較を追加します。

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