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2010.12.22

ブラケットが正しい位置に付いていない場合

成人の矯正治療ではブラケットを歯の表面に付けて、歯の位置をコントロールします。

歯を動かすテクニックに合せてブラケットは色々な種類があるのですが、私が使っているブラケットはストレートワイヤー用です。

このブラケットには歯の位置をコントロールする情報が組み込まれていて、適切な位置に付けると、ワイヤーの形に合わせて歯がスムーズに動いていきます。

逆を言えば、適切な位置に付いていない、歯がでたらめな方向に動いていきます。

ブラケットの位置が赤の位置のように横にずれると、歯が上の図のように回転します。

ブラケットが適切な位置についていても、上の図のように赤のように回転して付いていると、歯の根の先がずれて動きます。

ブラケットの位置が上下にずれている場合、歯の高さが揃わないだけでなく、歯が回転します。

この3つがすべてずれていれば、歯が複雑なずれかたをしながら動きます。

そうすると、歯の動きは悪くなりますし、上下の歯がぶつかりあえば、全く動かなくなることもあります。治療期間も無駄にのびていまします。

適切な位置にブラケットを付けることが重要なのですが、歯が削れていたり、クラウンやブリッジが入っていたり、歯の形態がもともと異常な場合は正しく付けるのが難しくなってきます。

また、歯が咬みこんでいる場合、隣の歯と重なっている場合は適切な位置に付けることができないこともあります。

私はブラケットをつけるときはあらかじめ模型の上でブラケットをつけ、全体的なバランスを見ながら位置を修正し、納得した位置に並んだものをインダイレクトボンディングテクニックで歯に付けています。

ダイレクトで付けるのがもはや怖くなってきたので、少し手間はかかりますがこの方法を続けようと思っています。

2010.12.21

セファロ

矯正では顔のレントゲン写真をとります。

このレントゲン写真を矯正歯科医はセファロ(セファログラム)と呼んでいます。

撮影することが多いのが、横顔を撮ったものと(上の写真左)、前後方向を撮ったもの(上の写真右)です。

横顔を撮っているところです。

本当は顔を壁の方に向けて撮影するのですが、うまく作れませんでした。ご容赦ください。

顔の横にある黒い板で両耳を固定して、頭がずれないようにします。

耳と目の下を結んだ線が床に平行になるようにして、毎回撮影します。

頭の角度、X線と頭とX線フィルム(もしくはイメージングプレートなど)の距離を毎回同じにしています。

できたレントゲンは実物の1.1倍の大きさになります。

このように毎回同じ撮り方でレントゲンを撮ると、

・成長によるあごの大きさの変化
・治療前後の歯の位置の違い
・他の人との比較
など、色々なことを見ることができます。

治療前と治療後

2010.12.20

舌の癖の除去 5. レッスン3

今までのレッスンはクリアできたでしょうか?

できない人は今までのレッスンを繰り返してください。

クリアできた人は次へすすみます。

舌の癖の除去、レッスン3です。

1. フルフルスポット

舌を細くして左右に振ります

なるべく早く動かしてください。

次にすばやくスポットに舌の先を付けます。スポットに付けるときは口を閉じないようにしてください。

これを繰り返してください。

2. カッ、スワロー

飲み込む時の舌の付け根の部分(舌根部)と、口の天井の奥の部分(軟口蓋)の動きを覚える訓練です。

少し上を見ながら、口をあけて指3本縦に口の中に入れます。

この状態で、「カッ」とはっきり声を出してください。

このときののどの動きの感覚をよく覚えてください。

次は同じくらい口を開けて、鏡でのどの奥を見ながら、「カッ」とはっきり声を出してください。

これが飲み込む時の、舌の付け根の部分(舌根部)と口の天井の奥の部分(軟口蓋)の正しい動きです。

次に同じくらい口を開けて、鏡でのどの奥を見ながら、口の中にスプレーで少量水を入れます。

「カッ」と声を出した時ののどの動きを思い出しながら、同じようにのどを動かして水を飲んでください。

この一連の練習を6回繰り返します。

飲む込む時はむせたりしないように注意してください。

のどを上手に動かせないとき、口を大きく開けて「カッ」と発音できずに、「ハッ」という発音になる場合があります。

そんなときは、指の数を減らし、指2本でトレーニングしてください。

指2本でもできないときは、指1本でも良いです。

発音ができるようになったら、指の数を増やしてください。

3. リップポスチャー

安静時のくちびるの訓練です。

下くちびるの裏に入れる綿を用意します。

歯科医院で使用するロールワッテが用意できる場合はそれを使用してください(上の写真左)。

用意できない場合は、薬局などで売っている角型の綿(上の写真真ん中)を丸め、糸でしばってください(上の写真右)。

丸まった綿を下くちびるの裏側に入れます。

舌の先はスポットに付け、奥歯は軽く咬みながら、30分間くちびるを閉じてください。

くちびるを開けてはいけません。

テレビを見ながら、本を読みながらなど、何かしながら30分間維持してください。

できましたでしょうか?

舌の訓練は根気強く継続することが重要です。

無意識の時でもできるようになるためには、簡単に思える練習でも意識をしながら継続することで癖がとれてきます。

2010.12.18

上顎前突とスポーツ外傷

久しぶりにマウスガードやスポーツ外傷に関わるお話です。

コンタクトスポーツ、球技、レースなどでは、転倒や激突時に歯を折ったり、脱臼したり、くちびるを切ったりすることがあります。

ところで、スポーツをしているときに、歯やくちびるをけがしやすい歯並びがあります。

上顎前突(出っ歯)です。

1993年に発表された外国の論文に、

「上の前歯が下の前歯より4mm以上出ている人、上くちびるが短い人、口をポカーンと開けている人、口で呼吸をする人は歯やくちびるのけがが多い。」

「上の前歯と舌の前歯の距離が4mmの人は2mmの人の2倍ケガをしやすく、10mm以上ある人の29.4%がケガをしている。」

という報告があります。

コンタクトスポーツ、球技、レースをする人で、上の前歯が出ている人は矯正治療をお勧めします。

 

2010.12.17

舌の癖の除去 4. レッスン2

舌の癖の除去、レッスン2です。

1. スラープスワロー

用意してほしいものは、ストローとスプレーです。

まず、舌の先をスポットにつけます。

次に小臼歯のあたりでストローを咬みます。

このとき、舌の先はスポットについているので、ストローは舌の下を通っています。

口角(矢印で示したくちびるの端)からスプレーで水を少し入れます。

舌の先はスポットに付けたまま、ストローは咬んだまま、水を奥歯の間から吸い込み、舌の上(舌の真ん中あたり)に集めます。

くちびるは閉じないように、この状態で水を飲み込んでください。

舌はストローで邪魔をされて、下に下がることなく、飲み込むことができるはずです。

これが正しい飲み込み方です。この動きを覚えましょう。

2. バイト

舌の癖があるひとは、飲み込むときに歯をかみ合わせていなかったり、食事を良く咬んでいないことが多く、咬む筋肉(咀嚼筋)がしっかりと機能していないことが多いです。

咀嚼筋のトレーニングとして、かみ締めを行います。

このトレーニングには注意が必要で、顎関節症のひとは症状を悪化させる可能性があるので控えてください。

あごのえら(耳の下で下あごの角の部分)の少し上を両手で触ります。

舌の先をスポットにつけたまま、奥歯を力いっぱい3秒間かみ締めます。

このとき、えらの上の筋肉(咬筋)が動くのを確かめてください。

かみ締めたあと、3秒間休憩します。

次に、こめかみを両手で触ります。

舌の先をスポットにつけたまま、奥歯を力いっぱい3秒間かみ締めます。

このとき、こめかみの筋肉(側頭筋前腹)が動くのを確かめてください。

かみ締めたあと、3秒間休憩します。

次に、耳の上を両手で触ります。

舌の先をスポットにつけたまま、奥歯を力いっぱい3秒間かみ締めます。

このとき、耳の上の筋肉(側頭筋後腹)が動くのを確かめてください。

かみ締めたあと、3秒間休憩します。

この一連のトレーニングを5回繰り返してください。

トレーニング中に痛みを感じた場合はすぐに中止してください。

3. ポスチャー

舌の位置を常に上に付けておく練習です。

スラープスワローと同様に、舌の先をスポットに付け、ストローを咬んでください。

くちびるは閉じ、5分間舌の先を上に付けた状態を維持してください。

できましたでしょうか。

どんどん難しくなってきます。

ひとつひとつのレッスンを無理なくこなせるようになってから次のレッスンに移ってください。

2010.12.15

オトガイ部の筋緊張

昨日コメントいただきました中に、

ところで、以前通っていた歯医者で、

下唇からあごにかけての部分に筋肉が付きすぎている、

これは歯並びが悪くて口を開けて息をしているからだといわれました。

確かに下唇からあごにかけて人よりお肉がついてる気がします。

しかし、歯並びと関係するのでしょうか。

との質問がありました。

下くちびるの下からあごにかけてをオトガイ部と呼んでいます。

この部分の筋肉のふくらみについて気にされている方も多いかと思います。

いずれ書こうと思っていたところなので、予定を変更し、オトガイ部の筋緊張(特にオトガイ筋の緊張)について書いていきます。

まず、オトガイ部に筋肉が付きすぎているとのことですが、このことだけで考えると2種類の状態が考えられます。

 

1つ目は、

下くちびるからオトガイ部の筋肉が常に緊張し、下の歯が内側に倒れている状態です。

自分で筋肉の力をコントロール出来なくなっているため、筋肉の緊張を緩和するトレーニングが必要になります。

2つ目は、

普段口が閉じにくいため、口を閉じようとするとオトガイ部にうめぼしのような筋緊張が現れる状態です。

口を開けて息をしているとのことですから、おそらく2つ目のパターンだと思います。

上の歯と下の歯の間に距離があるとき(上顎前突や開咬)や、E-line(鼻の先とおとがいを結んだライン)より口元が出ている場合(上下顎前突や上顎前突)などでは、普段安静にしているときに口が開きがちです。

口を閉じるときは、上くちびるは下がらず、下くちびるを上に持ち上げるようにして閉じます。

このとき、下くちびるを大きく持ち上げようとして、オトガイ筋が緊張します。

以前にも出しましたが、口を開けていると、くちびるが前歯を内側へ押す力が弱くなり、前歯は前に倒れやすくなります。

この状態が続くと、上顎前突、上下顎前突や開咬という状態になりやすくなります。

これらのかみ合わせになると口が閉じにくくなります。

結果、口を閉じるときにオトガイ筋が緊張するのです。

2つ目の患者さんの治療前(上)、治療後(下)の写真です。

矯正治療で上の前歯の位置が改善し、口が閉じやすくなりました。

下の写真ではオトガイ部の筋の緊張が取れ、あごのラインが自然になっています。

 

黒が治療前、赤が治療後です。

上の前歯が中に動き、鼻の下からあごにかけてのラインが大きく変化しているのがわかります。

子どもの間に悪い癖を取り除けば、矯正治療を行わなくてもかみ合わせや顔の形が良くなる可能性が高まります。

多くのかみ合わせや歯並びの不正には癖がかかわっています。

癖を取り除くことの重要性がこれらのことからわかるでしょう。

大人の場合も矯正治療と癖の除去を組み合わせることで、かみ合わせや顔の形のみならず、表情も良くなってきます。

気になる場合は、ぜひ矯正歯科医にご相談ください。

2010.12.14

くちびるの訓練

くちびるの訓練についてです。

シリーズで出している舌の癖の除去と少しはずれているように思われますが、舌の癖の除去を行うとき、くちびるの訓練も合わせて行っています。

上の写真のように、普段から口がぽかーんと空いていることが多い人は、前歯が前に倒れていることが多いです。

舌、唇、頬などの筋肉がバランスよく機能することで、歯並びは良くなります。

くちびるのトレーニングにはいろいろな商品が売り出されていますが、身近にあるものでトレーニングは可能です。

直径2~3cmぐらいのボタンを用意し、ボタンに40cmぐらいの糸を通して端をむすびます。

これで出来上がりです。

ボタンをくちびるでくわえ、糸を引っ張ります。

ボタンがはずれないように、くちびるをしっかりと閉じます。

引っ張る方向を、上向き、下向き、右、左、前など、変えることで効果的に唇の筋肉を鍛えることができます。

引っ張る力はボタンがはずれるか、はずれないか、ギリギリの力で引っ張ります。

引っ張る時間は5秒以上で、はずれないようにこらえてください。

くちびるの力がどの程度ついてきたかは、糸の先にペットボトルを結びつけ、ボトルに水を入れてボトルをもちあげ、その重さを測ることで確かめることができます。

くちびるを閉鎖する力がついてきたら、ボタンの大きさを小さくしてみてください。

2010.12.12

舌の癖の除去 3.レッスン1

レッスン1です。

昨日書いたものに加えて、いくつか追加で練習を行います。

1. スポット

以前にも出した写真です。

上の前歯の裏に少し膨らんだ部分があります(青の中心の少し前方)。

普段からその部分に舌の先を付けておきます。

このとき、舌の先を丸めないように注意してください。

正しい舌の位置は普段この位置に舌の先がついています。

2. ポッピング

子供が遊びでよくやるもので、舌全体を上あごに付けて、ポンッと音を鳴らしてみてください。

舌の先はスポットの位置で、音はなるべく大きな音を出してください。

この2つがしっかりできるようになると舌の機能はかなり良くなります。

頑張ってみてください。

2010.12.11

舌の癖の除去 2.簡単なものから始めてみましょう

舌の癖の除去について、簡単なものから始めます。

舌の大部分は筋肉です。

手足の筋肉と同じように、使えば使うほど上手に動くようになります。

まず、舌の形、舌の力や位置のコントロールの練習をしてみましょう。

1.舌の形のコントロール

舌をとがらせたり、平らにしてみてください。

舌をふらつかせず、5秒から10秒程度は形を維持させてください。

 

2.舌の位置や動きの速さのコントロール

舌の先でくちびるを1周なぞってください。

止まったり、後戻ったり、スピードを変えることなく、1分くらいかけてゆっくり同じ速さでなぞってください。

3.舌の形と力のコントロール

スティックを口の前に置き、舌の先をとがらせて、舌の先でスティックを力いっぱい押します。5秒から10秒程度は押してください。

次に舌を平らにして、舌の真ん中にスティックを当てます。あまり奥の方で当てると吐き気をもよおすことがあるのでおくに入れすぎないでください。そして舌に力を入れてスティックを上に押し上げてください。これも5秒から10秒程度は押してください。

できましたでしょうか?

舌の動きや位置が悪いひとは、下あごと首の間にある舌骨が下がっているひとが多いです。

3番目のトレーニングで舌を上に持ち上げることができるようになると、舌骨の位置が上に上がり、あごの下のたるみがとれたり、少なくなりますので、あごのラインがシャープになります。

美容とお口の健康、良い歯並びの維持には舌の正常な機能は欠かせません。

ぜひ頑張ってみてください。

2010.12.10

舌の癖の除去 1.舌の動きは正常ですか?

舌の癖の除去について書いていきたいと思います。

まず最初に、舌の動きは正常ですか?

チェックしてみましょう。

普段、舌の先は、

上の前歯の裏の少し膨らんだところ(上の写真の半透明の青い部分:スポットと呼んでいいます)についていますか?

ついていない場合は、舌の位置が普段から悪い位置(低位)にあります。

上の写真のスポットに舌の先を付けたまま、舌をスポットからはずさず、口を開けたり、閉じたりできますか?
できない場合は、舌の動きが常に下あごの動きに連動していて、分離した動きが出来ていません。

ともに舌の動き(機能)の悪い状態です。

では、次から舌のトレーニングに入りたいと思います。

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