国体候補選手メディカルチェック
昨日は来年度の国体候補選手のメディカルチェックに行ってきました。
平成22年から参加して今年で5年目。
今年もさまざまな競技から約90名の選手の参加でした。
選手の口の中の診察風景です(顔はわからないようなアングルにしています)。
この中から多くの選手が活躍してくれることを願っています。
歯周病菌をのみ込むと腸内細菌が変化する?
読売新聞のWeb版から
怖い歯周病菌、のむと内臓等にダメージ…立証か
歯周病の原因となる細菌をのみ込むと腸内細菌が変化して様々な臓器や組織に炎症を起こすことが、新潟大大学院医歯学総合研究科の山崎和久教授(58)のグループの研究で明らかになった。
歯周病が動脈硬化や糖尿病などのリスクを高めることは知られており、口腔(こうくう)内の衛生管理が全身の健康を保つことを裏付ける研究結果として注目されそうだ。
これまでは、歯周病になった歯茎などの患部から細菌などが侵入し、全身を循環して血管や脂肪組織、肝臓などに炎症を起こすと考えられていたが、具体的な立証はされてこなかった。
研究では、歯周病の原因菌の一つをマウスの口に投与したところ、腸内細菌のバランスが崩れ、腸壁の細胞の間に生じた隙間に悪玉菌が侵入した。これによって、悪玉菌の毒素が分解されずに腸から吸収され、血液を通して様々な臓器に広がることが証明された。
これらの変化は、肥満や糖尿病でみられる特徴と似ているため、歯周病が全身に悪影響を及ぼすことの解明につながる可能性が高いという。
山崎教授は「早い時期からの口腔管理が、将来的にメタボリックシンドロームなどのリスクを減らすことにつながる。新たな治療法の確立につながってくれれば」と話している。
論文を読んでいないので、記事からだけでは本当かどうかわかりませんが、
この通りなら、歯周病治療、口腔衛生管理、歯周病になりにくい歯列(矯正歯科医なので、これが言いたかったので記事を引っ張ってきました)が重要ということになりますね。
ポイント還元
朝日の記事から
歯科医院でもポイント還元 患者集め?規制に二の足
歯科医院で治療を受けると、商品券などと交換できるポイントがもらえるしくみが広がっている。国民の医療費が、治療とは直接関係ない患者集めに使われている可能性がある。患者にポイントを与えることで実質的な値引き競争につながり、全国で一律であるはずの医療の価格に差ができ、質の格差も生まれかねない。厚生労働省も、対策を慎重に検討している。
歯科ポイントのしくみは、東京都渋谷区の歯科コンサルタント会社が2006年から運営を始めた。同社によると、全国約6万9千ある歯科医院のうち、加盟しているのは約400。加盟医院で治療を受けた患者は、同社のウェブサイト上で治療や設備の満足度について6問のアンケートに答え、歯科医院の口コミを書き込むと、治療内容によって100円~1万円相当のポイントをもらえる。
ポイントの付け方は、歯科医院に任せられているため、患者の勧誘に活用できる。1回の治療で100ポイントをつける医院が多く、初診時や検診1回につき500ポイント、患者を紹介すると1千ポイントをもらえる医院もある。500ポイントたまると1ポイント1円として、商品券や電子マネーに交換できる。
「1万ポイント=1万3千円」などと、歯科医院は運営会社からポイントを事前に買い取る。または患者が口コミをした後、例えば100ポイントにつき300円を支払う方法もある。いずれも保険料や税金からなる診療報酬が使われているが、歯科医院は支払った金額を取り戻すために不必要な治療をして医療費の無駄につながる恐れが指摘されている。
ポイントを導入する歯科医院が増えているのは、歯科同士の競争が激化しているためだ。日本歯科医師会の瀬古口精良常務理事は「医療は非営利なので、(患者集めにつながるポイント制には)原則的には反対だが、時代の流れもあるので認めることも考えなければいけない」と話す。
厚労省の省令では、公的医療保険を扱う医療機関は「値引きなど経済的な利益を提供して患者を集めてはいけない」としている。同じ治療は、全国のどの保険医療機関でも同じ価格で提供するのが保険医療の原則で、患者集めは治療の質で競うべきだとされている。
厚労省は民主党政権だった12年秋、やはり公的医療保険でまかなわれる処方薬で患者が自己負担分を支払う場合、ポイント制があるクレジットカードの使用を禁止しようとしたが、政権交代で立ち消えになった。厚労省は「クレジット払いは1996年から認めていて定着しており、シャットアウトするのは難しい」(医療課)と説明する。そこで歯科ポイントも、値引きにつながる可能性はあるとしつつも、「すぐには判断できない」(同)と慎重な姿勢だ。(月舘彩子、関根慎一)
この記事は電子版から拾ってきました。会員登録していないと記事の一部しか読めません。記事の一部分だけでを読んで、「これを問題にするとクレジットカード払いも引っかかってくるよな」と思い、会員版の方まで開いてみました。やっぱり書いてありました。
私の歯科医院もクレジットカード払いを行っています。
矯正治療はそのほとんどが自費診療で、支払いが高額になることがあります。
現金で支払われる患者さんも多いですが、大金を持ち歩くことになります。
そのリスクを回避する手段として、銀行振り込み、クレジットカード払い、信販会社を通したクレジット払いを導入しています。
クレジットカード払いはあくまでも支払いの手段です。クレジットカード払いの場合、支払った額に対してポイントはつくでしょう。また、クレジットカード加盟店側(私の歯科医院)にも手数料は発生します。しかし、患者紹介や、来院に対してポイントが発生するものではありません。「いっしょにされるのもどうかなー」と思います。
奥歯を失うとアルツハイマー病が悪化?
朝日新聞の記事から
奥歯失うとアルツハイマー病悪化 広島大、マウスで実験
【南宏美】奥歯を失うと、これまで原因とされてきたたんぱく質の蓄積とは異なる仕組みでアルツハイマー病が悪化することを、広島大などのチームがマウスの実験で突きとめた。広島大が3日発表した。
認知症の一つのアルツハイマー病は、脳内にアミロイドβという異常なたんぱく質が蓄積することで症状が進むと考えられている。
赤川安正・広島大名誉教授らは、遺伝子操作でアルツハイマー病を発症するようにしたマウスに、暗い部屋に入ると電気ショックを受けることを覚えさせてから、左右の奥歯6本を抜いたものと残したものに分けた。約4カ月後に調べると、歯を残した方は7匹全てが暗い部屋に入らなかったが、抜いた方は10匹中6匹が入った。
どちらのマウスも脳内でアミロイドβが蓄積した面積に差はなかったが、記憶をつかさどる脳の海馬の細胞数は、歯を抜いた方が少なかった。アミロイドβの蓄積とは別に、海馬の細胞が減ることで学習や記憶能力が低下したと考えられるという。赤川名誉教授は「かむことによる脳への刺激や脳の血流量が減った影響ではないか。今後、解明したい」と話している。
この記事はヒトで実証されたデータではありません。
しかし、奥歯で噛めないお年寄りに噛める入れ歯を入れると日常の活動が改善されるといいます。
虫歯や歯周病などで奥歯を喪失するといろいろな面で不都合が出てきますね。
矯正治療によって虫歯や歯周病のリスクを下げるとアルツハイマーにも有効かもしれないと思いました。
黒いバー
先日デンタルショーに行き、そこで黒いバー(歯やプラスチックや金属などを削る道具)を見つけました。
ダイアモンドライクカーボンという炭素のアモルファスをバーの表面にコーティングしているそうで、従来のバーより耐久性に優れ、熱を帯びにくいということでした。
右が従来品、左がダイアモンドライクカーボンでコーティングされた黒いバーです。
早速、買って使用してみました。
熱を帯びにくいので、レジンを削っているときに段差ができにくく、スムーズに切削できます。
少し高いですが、良い買い物をしました。
歯周組織の再生
朝日新聞デジタルの記事から
培養液で歯周病治療、名大チーム成功 ヒトでも効果
幹細胞を培養する時にしみ出る成分だけを使って、イヌの歯ぐきの骨などを再生することに、名古屋大医学部の上田実教授、片桐渉助教らのチームが成功した。ヒトの歯周病治療に効果があるという。12月8日付の米生化学誌電子版に発表する。
チームは、ヒトの骨髄からとった幹細胞の培養液をスポンジにしみ込ませ、歯ぐきの骨などを5ミリほど削って歯周病の状態にしたイヌに移植。4週間後、歯ぐきの骨だけでなく、骨と歯をつなぐ靱帯(じんたい)、セメント質のすべてを、3ミリほど再生することに成功した。
チームによると、培養液に含まれる複数の成長因子が患部周辺の幹細胞を呼び集め、それぞれの組織の再生を促しているという。
培養液中の複数の成長因子というところがポイントでしょう。
歯周組織の再生だけでなく、唇顎口蓋列の患者さんの瘢痕治癒や、顎裂部の誘導などにも応用ができるのではと個人的に期待しています。
ユニット周りの整備
私の診療室にはユニットが3台あります。
1台はエンジン・タービンが付き、残りの2台は倒れるだけの機能しかありません。
開業当初は本当に1台だけで間に合うような予約状況でした。
しかし、最近は予約で一杯の日も出てくるようになり、エンジン・タービン付きが1台では心もとなくなりました。
そこで、思い切って倒れるだけのユニットにエンジン・タービンを増設しました。
今日の朝9時から工事を始め、午後6時半終了。
その結果がこれです。
雰囲気がかなり変わりました。
ユニット2台がフル稼働する日が来るといいなと思います。
奥歯で噛めるとアルツハイマーになりにくい?
昨日、歯科衛生士向けのホワイトニングのセミナーにお手伝いに行ってきました。
その講義スライドの中に面白い論文があったのでご紹介します。
Occlusal disharmony increases amyloid-β in the rat hippocampus.
Neuromolecular Med. 2011 Sep;13(3):197-203. Epub 2011 Jul 13.
Ekuni D, Tomofuji T, Irie K, Azuma T, Endo Y, Kasuyama K, Morita M.
Amyloid-β plays a causative role in Alzheimer’s disease. Occlusal disharmony causes chronic psychological stress, and psychological stress increases amyloid-β accumulation. The purpose of the present study was to investigate whether occlusal disharmony-induced psychological stress affects the accumulation of amyloid-β and its related gene expressions in the rat hippocampus. Eight-week-old male Wistar rats (n = 18) were divided into three groups of six rats each: (1) a control group that received no treatment for 8 weeks; (2) an occlusal disharmony group that underwent cutoff maxillary molar cusps for 8 weeks; and (3) a recovered group that underwent cutoff maxillary molar cusps for 4 weeks followed by recovery for 4 weeks. Occlusal disharmony increased plasma corticosterone levels in a time-dependent manner. Levels of amyloid-β 40 and 42, glucocorticoid receptor (Gr) protein, and cleaved caspase 3 (Casp3) as well as gene expressions of amyloid precursor protein, beta-secretase, Casp3, and Gr in the hippocampus in the occlusal disharmony group were significantly higher than those in the control group (P < 0.016). These findings were significantly improved by recovery of occlusion (P < 0.016). These results indicate that psychological stress induced by occlusal disharmony reversibly induces amyloid-β 40 and 42 in the rat hippocampus through the glucocorticoid signal.
ラットを使った実験で、昨年の岡山大学の業績です。
ラットの奥歯を削って奥歯で噛めなくすると、アルツハイマーに関連するamyloid-βが増加し、
再び奥歯で噛めるようにするとamyloid-βの増加が抑制されたそうです。
ラットのデータなので、このデータで人間もそうだとは言えませんが、
人間でも同じような結果が得られれば、年をとって奥歯がなくなり、奥歯でよく噛めなくなるとアルツハイマーになりやすいということになります。
歯がなくなって噛めなくなった人には入れ歯を入れて噛めるようにしないと時間とともにどんどんアルツハイマーになりやすくなるということになります。
噛めるということがいかに重要かがあらためて認識させられました。
この実験を少し改良して、不正咬合状態にしたラットでデータを採ってほしいなと思いました。
虫歯で死亡 -アメリカ
Livedoorから
以下引用
【9月7日 GlobalPost】米オハイオ州シンシナティの男性(24)が8月31日、歯の感染症で死亡した。同市の大学病院医師が語った。
死亡した男性、カイル・ウィリスさんの遺族は、米NBCテレビの系列局WLWTテレビに対し、ウィリスさんは2週間前に親知らずが痛み始めたと語った。歯科医は、親知らずを抜歯する必要があると告げたが、ウィリスさんは当時無職で無保険だったため、抜歯をしなかった。
その後ウィリスさんは頭痛と顔のはれに悩まされ、緊急治療室に搬送された。
おばのパティ・コリンズさんは、WLWTテレビの取材に「(医師らは)抗生物質と痛み止めを与えた。でも、ウィリスは抗生物質を買うお金がなかった。そこで痛み止めだけもらった。でも彼に必要なのはそっちではなかったのよ」と語った。
痛み止めは効果があったものの、感染は拡大し、最終的にウィリスさんの脳に達した。
「歯科医に行って歯痛を治療しておくべきだった。そうすればこんなことにならなかった。みんながその教訓を得たわ」と、コリンズさんは語った。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校の歯科医、アービン・シルバースタイン氏は、ABCテレビに対し、「歯の病気が深刻な症状をもたらすことを人びとは知らなさすぎる。問題は目で見える部分だけではないんだ。多くの人が歯の疾病で命を落としている」と語った。
カイル・ウィリスさんは、米有名ミュージシャン、ブーツィー・コリンズのおい。(c)News Desk/GlobalPost.com/AFPBB News
数年に1回、アメリカで虫歯が悪化して死亡したというニュースを見ます。
以前は子供のニュースでした。
虫歯は感染症なので、放置すれば広がります。
時々数年間放置という人も聞きます。
早めに対処したほうが良いですよ。
歯科の医療訴訟
昨日届いたJCOから
「H22 医事訴訟新規件数は1割増、歯科は72件。審理期間は短縮」
平成22年の新規の医療訴訟は1089件で、内科が最も多く、次が外科、整形外科、産婦人科の順で、歯科は5番目72件だったそうです。
平均の審理期間は歯科では17.4ヶ月だったそうです。
医療全体でも新規訴訟は1昨年に比べ約10%増加しているそうです。
歯科では訴訟になったものが72件と歯科における年間の治療件数から考えればわずかですが、訴訟にならずともトラブルになったケースはかなり多いものと考えます。
また、一旦訴訟になってしまえば平均約1年半の審理が待っています。
患者、医療者ともにかなりのストレスになることは想像に難しくありません。
いかにトラブルを防ぐかということが本当に重要であると再認識しました。