脳震盪
脳震盪(のうしんとう)は頭やあごに衝撃が加わったときに、脳に起こる機能障害です。
脳震盪の症状でよくイメージされるのは意識障害とふらつきですが、他に頭痛や記憶障害なども起こります。
脳震盪はかなり危険なもので、意識を失うほどの脳震盪を起こした後にすぐにまた脳に衝撃が加わると、場合によっては死に至ります(セカンドインパクトシンドローム)。
意識を失うほどの脳震盪を起こした後は、脳が回復するまでプレーを控えた方が良いのです。
あごに衝撃が加わったときに、マウスガードを装着していれば衝撃の脳への伝達はかなりの確率で防ぐことができます。
しかし、市販のマウスガードは歯科医院で作ってもらうマウスガードに比べて外れやすいため、衝撃が加わったときマウスガードが外れることなく衝撃を緩和してくれるかどうかは疑問です。
人とぶつかったりする可能性のあるスポーツでは安心して競技するためにもマウスガードを装着してほしいです。
オパレッセンス ブースト
私は歯科医院で行うオフィスホワイトニングにオパレッセンス・ブーストを使用しています。
このホワイトニングキットは日本では認可されていないので、個人輸入でアメリカから購入しています。
かなり強い漂白剤を使っているので、漂白効果が高く、その上、知覚過敏になるのを抑える薬剤も入っています。
オフィスホワイトニングの中には歯の表面をすりガラスのように少しざらざらにして、光を乱反射させて白く見せるものがあります。
その場合、歯の光沢感がなくなるのみならず、ざらざらした部分に色が付きやすく、すぐに後戻りした印象を与えます。
このオパレッセンス・ブーストは、歯の表面をざらざらにせず、歯の光沢感を損ねないのも特徴の一つです。
スポーツによる骨折と親知らず
スポーツ中に人やボールなどがあごにぶつかった場合、下あごが骨折することがあります。
今回は下あごの骨折と下の親知らずについてです。
下の親知らずがあるのになかなか生えてこない場合、親知らずが生える隙間がない場合があります。
そういった下の親知らずは斜めを向いたり、真横を向いていたりします。
赤の矢印で示した歯が親知らずです。
親知らずが斜めになって、骨の中に埋まっています。
こういった状態のとき、下あごに衝撃が加わると骨折を起こしやすくなります。
歯の一番硬い部分のエナメル質は、歯の根っこの部分と違い、骨にひっついていません。
そのため、骨に衝撃が加わったとき、強度的に弱いエナメル質と骨の境目に沿って骨折しやすくなるのです。
人とぶつかりあうコンタクトスポーツをされるかたは、シーズンオフのときに歯科医院で親知らずのチェックをしてもらってはどうでしょうか。
歯の動揺
先日矯正治療中の患者が、
「歯がすごく動く。抜けないだろうか。」
と心配されて来院されました。
詳しく聞くと、歯を動かしている方向と逆方向に大きく動くことを心配されていました。
今日の話題はこれに関連した、「矯正治療中の歯の動揺」についてです。
矯正治療で歯が動き始めると、歯磨き等で歯が揺れ動くことに気が付くと思います。
歯が抜けないか心配になってくる方も多いです。
歯周病で歯の周囲に骨がほとんどない時以外は歯がぬけることはほぼありません。
抜ける方向に暴力的な力で、思いっきり引っ張った場合は別ですが。
では、なぜ揺れ動くのでしょうか。
以前出した図を少し改変して説明します。
歯に力がかかると、押された方の骨がとけて、反対側に骨ができて動いていくと以前説明しました。
骨がとけるのは早いのですが、骨ができるのには少し時間がかかります。
そのため、上の図にある青い部分にはしっかりとした骨がない時期がどうしても出てきます。
その時期に歯を動かしてきた方向とは逆方向に押すと、歯が揺れ動きます。
これが歯の動揺です。
ただ、この動揺する時期でも、歯は歯根膜という線維で周囲の骨とつながっているので、無理に歯根膜を引きちぎる力がかからない限り、歯が抜けることはありません。
重度の歯周病でない限り、普段の食事や歯磨きで歯が抜けることはありませんのでご安心ください。
サボテンの花
今朝、歯科医院に着くと、サボテンの花が咲いていました。
寒くなってきたので、もう咲かないかなと思っていました。
夏の花にくらべやや小ぶりでした。
夏の花は、出勤した時にはすでに萎んでいる状態でしたが、朝が明けるのが遅くなってきたためか出勤時間でも開いた状態を見ることができました。
インダイレクトボンディング
インダイレクトボンディングという技術があります。
矯正治療で歯にブラケットを付けるときに、
1個づつ直接歯に付けていくのがダイレクトボンディング、
あらかじめ歯型にブラケットを仮止めして、それをマウスピースで複数個一気に歯につけていくのがインダイレクトボンディングです。
自作のインダイレクトボンディング用マウスピース
少し自分なりの工夫をしています。
インダイレクトボンディングはマウスピースを準備するのに手間がかかります。
しかし、インダイレクトボンディングでは、模型上で仮止めしながらあらゆる方向からブラケットの位置、歯に対する角度、他の歯とのバランスを見ることができます。
そのため、直接歯にブラケットを付けるより、正確な位置に付けることができます。
不正確な位置にブラケットが付いていると、歯の移動が遅くなります。
場合によってはまったく歯が動かないこともあります。
正確なブラケットの位置は矯正治療がスムーズに進行するのに不可欠なのです。
また、インダイレクトボンディングでは複数のブラケットを同時につけるので、診療時間が短くなります。
私の歯科医院では、何か装置が入っていてインダイレクトボンディングができない場合を除けば、すべての患者さんでインダイレクトボンディングを行うようにしています。
その結果、マルチブラケット中の患者さんの治療の進み具合は劇的に改善しました。
その分私の技工時間は増えましたが・・・
院内夜景
院内の夜景です。
矯正治療ではしばしば診療時間が長くなることがあります。
患者さんや付き添いの方がゆったりとお待ちいただけるように中庭を作ってもらいました。
地面を覆っている笹はまだ植えられて半年なので十分と育っていません。
夜はライトアップされ、なかなか見ごたえがあると思います。
2階はカフェです。
値段も手ごろでおいしいので、良く賑わっています。
咬むトレーニング
先日発行された日本矯正歯科学会の学会誌に掲載された論文の話題です。
咬むトレーニング用に開発されたガム(DAY-UPオーラルガム かむトレーニング)を使用して、
児童に「右側で10回噛んだ後、左側で10回噛む」ことと、
「唇を閉じて噛むこと」、
「1日2回朝夕食後の10分間トレーニングを行う」、
というルールで3か月トレーニングを行うというものです。
その結果、あごの動かし方が悪かった児童では、咬むときのあごの動かし方が良くなり、奥歯も直立するようになってきたそうです。
食事中に両方の奥歯で良く咬んでいるひとは、奥歯で食べ物をすりつぶす動き(グラインディング)ができます。
あまり咬んでいない人は、咬みきったり、たたきつぶす動き(チョッピング)はできるのですが、すりつぶす動きは苦手です。
左右の奥歯で交互に咬むことで、チョッピングのあごの動きがグラインディングの動きができるようになります。
おそらく、このトレーニングで舌の動きが悪かった児童は舌の動きも良くなっているでしょう。
また、歯並びががたがたしている場合は、その程度が軽くなっているか、なくなっていると思います。
少しお子さんの歯並びが心配なかたは、食事の時に「右側で10回噛んだ後、左側で10回噛む」ことと、「唇を閉じて噛むこと」を取り入れてみましょう。
写真はライオン歯科材株式会社のホームページから転載
参考文献
硬性ガムレーニングが混合歯列期児童の咀嚼運動および第一大臼歯植立に与える影響
根岸慎一ら
咬むこと
今日は咬むことについてです。
よく咬むことが大切だということはみなさんも同意されると思います。
なぜ咬むことが大切なのでしょうか。
あまり咬まない人では咬みやすい方の歯だけで咬む癖がつきがちです。
片方だけで咬んでいると、あごの骨の形が左右で違ってきますし、あご筋肉の大きさや機能のバランスが左右で崩れてきます。
悪い舌の癖が身についたり、口の中の少しの刺激で吐き気を及ぼすこともあります。
あごの骨の横幅が狭くなり、歯が並びきらないこともあります。
咬むことは歯並びに大きく影響してきます。
普段からよく咬む様に心がけましょう。
矯正治療中に歯が痛くても食べられる食事
本日も食事についてです。
矯正治療中に困るものといえば食事です。
痛くて食べられない
多くの矯正患者さんの心の叫びだと思います。
矯正治療中の歯の痛みは、歯を支える歯根膜が炎症を起こしているためです。
そのため、歯に力が加わり、歯根膜が押されると痛みをかんじます。
痛みを抑えるには、あまり咬まなくても済む食事が良いのです。
あまり咬まなくても済む食事として、ネット上に投稿している矯正患者さんが痛い時にどのように対処されていたかをまとめると次の4つぐらいに集約されます。
1.やわらかい食材の選択、やわらかく煮込む
太い麺類(うどんやきしめん)をやわらかく煮込むという意見が多かったです。
細い麺類(ラーメンやスパゲッティー)は装置にからまるので否定的な意見もありましたが、かまなくても済むという面では良いかと思います。
やわらかいパン、ケーキ、ドーナツをあげているものも多かったです。パンやドーナツはかたいものもありますので注意が必要です。
煮物(おでん、シチュー)、煮魚、卵料理、豆腐料理、ポテト系(マッシュポテト、ポテトサラダ)など。
2.肉はミンチに
かみちぎったり、引きちぎったりすると痛みが出やすいです。
肉はミンチにすると良いでしょう。
ハンバーグ、ツミレ、麻婆豆腐など
3.スープ系の多用、流し飲み
かまずに済むので、痛くて全く食べられないときに出てくる対処法でした。
お茶漬け、リゾット、スープ類、ウィダーインゼリー、カロリーメイトなど
食事をこれらだけでずっと済ませると栄養が不足します。
痛みは通常数日で慣れてくるので、あくまでも痛くて全く食べられないときに限定してください。
4.食材は小さめに切る
小さく切ると咬む回数を減らすことができます。
フードプロセッサーなどを利用すると、痛くて全く食べられないときでも必要な栄養素を取ることができると思います。
矯正治療中の痛みへの対応として、一番してほしくないのが「食べない」ことです。
体を壊すだけでなく、歯の移動にも悪い影響を与えます。
少し工夫が必要になりますが、食事だけは必ず取るようにしてください。
矯正治療が進むと痛みにも慣れてきて、なんでも大体食べられるようになります。
最後にあまりかまなくても済む料理のレシピが載っている本をいくつか挙げておきます。