黒いバー
先日デンタルショーに行き、そこで黒いバー(歯やプラスチックや金属などを削る道具)を見つけました。
ダイアモンドライクカーボンという炭素のアモルファスをバーの表面にコーティングしているそうで、従来のバーより耐久性に優れ、熱を帯びにくいということでした。
右が従来品、左がダイアモンドライクカーボンでコーティングされた黒いバーです。
早速、買って使用してみました。
熱を帯びにくいので、レジンを削っているときに段差ができにくく、スムーズに切削できます。
少し高いですが、良い買い物をしました。
歯周組織の再生
朝日新聞デジタルの記事から
培養液で歯周病治療、名大チーム成功 ヒトでも効果
幹細胞を培養する時にしみ出る成分だけを使って、イヌの歯ぐきの骨などを再生することに、名古屋大医学部の上田実教授、片桐渉助教らのチームが成功した。ヒトの歯周病治療に効果があるという。12月8日付の米生化学誌電子版に発表する。
チームは、ヒトの骨髄からとった幹細胞の培養液をスポンジにしみ込ませ、歯ぐきの骨などを5ミリほど削って歯周病の状態にしたイヌに移植。4週間後、歯ぐきの骨だけでなく、骨と歯をつなぐ靱帯(じんたい)、セメント質のすべてを、3ミリほど再生することに成功した。
チームによると、培養液に含まれる複数の成長因子が患部周辺の幹細胞を呼び集め、それぞれの組織の再生を促しているという。
培養液中の複数の成長因子というところがポイントでしょう。
歯周組織の再生だけでなく、唇顎口蓋列の患者さんの瘢痕治癒や、顎裂部の誘導などにも応用ができるのではと個人的に期待しています。
ユニット周りの整備
私の診療室にはユニットが3台あります。
1台はエンジン・タービンが付き、残りの2台は倒れるだけの機能しかありません。
開業当初は本当に1台だけで間に合うような予約状況でした。
しかし、最近は予約で一杯の日も出てくるようになり、エンジン・タービン付きが1台では心もとなくなりました。
そこで、思い切って倒れるだけのユニットにエンジン・タービンを増設しました。
今日の朝9時から工事を始め、午後6時半終了。
その結果がこれです。
雰囲気がかなり変わりました。
ユニット2台がフル稼働する日が来るといいなと思います。
奥歯で噛めるとアルツハイマーになりにくい?
昨日、歯科衛生士向けのホワイトニングのセミナーにお手伝いに行ってきました。
その講義スライドの中に面白い論文があったのでご紹介します。
Occlusal disharmony increases amyloid-β in the rat hippocampus.
Neuromolecular Med. 2011 Sep;13(3):197-203. Epub 2011 Jul 13.
Ekuni D, Tomofuji T, Irie K, Azuma T, Endo Y, Kasuyama K, Morita M.
Amyloid-β plays a causative role in Alzheimer’s disease. Occlusal disharmony causes chronic psychological stress, and psychological stress increases amyloid-β accumulation. The purpose of the present study was to investigate whether occlusal disharmony-induced psychological stress affects the accumulation of amyloid-β and its related gene expressions in the rat hippocampus. Eight-week-old male Wistar rats (n = 18) were divided into three groups of six rats each: (1) a control group that received no treatment for 8 weeks; (2) an occlusal disharmony group that underwent cutoff maxillary molar cusps for 8 weeks; and (3) a recovered group that underwent cutoff maxillary molar cusps for 4 weeks followed by recovery for 4 weeks. Occlusal disharmony increased plasma corticosterone levels in a time-dependent manner. Levels of amyloid-β 40 and 42, glucocorticoid receptor (Gr) protein, and cleaved caspase 3 (Casp3) as well as gene expressions of amyloid precursor protein, beta-secretase, Casp3, and Gr in the hippocampus in the occlusal disharmony group were significantly higher than those in the control group (P < 0.016). These findings were significantly improved by recovery of occlusion (P < 0.016). These results indicate that psychological stress induced by occlusal disharmony reversibly induces amyloid-β 40 and 42 in the rat hippocampus through the glucocorticoid signal.
ラットを使った実験で、昨年の岡山大学の業績です。
ラットの奥歯を削って奥歯で噛めなくすると、アルツハイマーに関連するamyloid-βが増加し、
再び奥歯で噛めるようにするとamyloid-βの増加が抑制されたそうです。
ラットのデータなので、このデータで人間もそうだとは言えませんが、
人間でも同じような結果が得られれば、年をとって奥歯がなくなり、奥歯でよく噛めなくなるとアルツハイマーになりやすいということになります。
歯がなくなって噛めなくなった人には入れ歯を入れて噛めるようにしないと時間とともにどんどんアルツハイマーになりやすくなるということになります。
噛めるということがいかに重要かがあらためて認識させられました。
この実験を少し改良して、不正咬合状態にしたラットでデータを採ってほしいなと思いました。
虫歯で死亡 -アメリカ
Livedoorから
以下引用
【9月7日 GlobalPost】米オハイオ州シンシナティの男性(24)が8月31日、歯の感染症で死亡した。同市の大学病院医師が語った。
死亡した男性、カイル・ウィリスさんの遺族は、米NBCテレビの系列局WLWTテレビに対し、ウィリスさんは2週間前に親知らずが痛み始めたと語った。歯科医は、親知らずを抜歯する必要があると告げたが、ウィリスさんは当時無職で無保険だったため、抜歯をしなかった。
その後ウィリスさんは頭痛と顔のはれに悩まされ、緊急治療室に搬送された。
おばのパティ・コリンズさんは、WLWTテレビの取材に「(医師らは)抗生物質と痛み止めを与えた。でも、ウィリスは抗生物質を買うお金がなかった。そこで痛み止めだけもらった。でも彼に必要なのはそっちではなかったのよ」と語った。
痛み止めは効果があったものの、感染は拡大し、最終的にウィリスさんの脳に達した。
「歯科医に行って歯痛を治療しておくべきだった。そうすればこんなことにならなかった。みんながその教訓を得たわ」と、コリンズさんは語った。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校の歯科医、アービン・シルバースタイン氏は、ABCテレビに対し、「歯の病気が深刻な症状をもたらすことを人びとは知らなさすぎる。問題は目で見える部分だけではないんだ。多くの人が歯の疾病で命を落としている」と語った。
カイル・ウィリスさんは、米有名ミュージシャン、ブーツィー・コリンズのおい。(c)News Desk/GlobalPost.com/AFPBB News
数年に1回、アメリカで虫歯が悪化して死亡したというニュースを見ます。
以前は子供のニュースでした。
虫歯は感染症なので、放置すれば広がります。
時々数年間放置という人も聞きます。
早めに対処したほうが良いですよ。
歯科の医療訴訟
昨日届いたJCOから
「H22 医事訴訟新規件数は1割増、歯科は72件。審理期間は短縮」
平成22年の新規の医療訴訟は1089件で、内科が最も多く、次が外科、整形外科、産婦人科の順で、歯科は5番目72件だったそうです。
平均の審理期間は歯科では17.4ヶ月だったそうです。
医療全体でも新規訴訟は1昨年に比べ約10%増加しているそうです。
歯科では訴訟になったものが72件と歯科における年間の治療件数から考えればわずかですが、訴訟にならずともトラブルになったケースはかなり多いものと考えます。
また、一旦訴訟になってしまえば平均約1年半の審理が待っています。
患者、医療者ともにかなりのストレスになることは想像に難しくありません。
いかにトラブルを防ぐかということが本当に重要であると再認識しました。
咬み合わせと転倒事故経験
本日手元に届いたスポーツ歯学という雑誌から、
「咬合状態と転倒事故経験の関連性に関する調査研究」という論文に、
一般の成人に対し、「奥歯でしっかり噛めますか」という質問を行い、「はい」と「いいえ」と答えた人たちを比較すると、「はい」と答えた人は転倒事故が少ない傾向にあったということが書いてありました。
噛めることは体の機能に対して重要な働きをしており、高齢者で歯がなくなって噛めなくなると体のバランスが低下するということや、歯がない人に入れ歯を入れると歩くスピードが早くなりや歩幅が広くなるという報告もあります。
年をとってからもよく噛めるようにすることがいかに重要かを再認識させられました。
虫歯、処置済みの歯の数
最近子供の患者さんの比率が上がってきています。
立て続けで子供の口の中を見ていて思うのが、最近の子供の口の中の虫歯や、虫歯治療後の歯の数が減ってきているなということです。
実際にデータでも示されていますが、私が矯正歯科に入局したころは子供の患者さんの口の中には虫歯や処置済みの歯が大体数本ぐらいはあり、逆に虫歯が1本もない患者さんが少なかったように思います。
現在、私の歯科医院に受診する子供の患者さんは虫歯や虫歯になって処置した歯が無いのが普通といった状態です。
矯正治療に子供をつれてくる保護者のかたの口腔衛生に対する意識が高いのと、私たちの先輩の歯科医師の努力のたまものかなと思っています。
あと10年もすれば成人の矯正患者についても虫歯や虫歯になって処置した歯が無いのが普通といった状態になればと思っています。
噛む回数
普段の食事の噛む回数は?
という話になると、最近の子供はあまり噛まないという意見を良く聞きます。
普段の食事の噛む回数について、
戦前は1回の食事の平均時間は22分間、だいたい1420回くらい噛んでいたそうです。
現在は食事の平均時間(食べている時間)は11分程度、噛む回数は620回です。
現代の食事は戦前にくらべ、栄養価は高く、それによって平均寿命は延びているのはたしかですが、噛まなければ飲み込めない食材が多いため、あごの発育という点では戦前の食事のほうが適しているかもしれません。
人工的な歯の製作
昨日の朝日新聞のニュースから
歯のタネから成熟した歯を作り出し、移植した口の中でも正常に機能させることに、東京理科大の辻孝教授と大島正充助教らのチームがマウスを使って成功した。13日の米科学誌プロスワン(電子版)に発表した。
辻教授らは、東京医科歯科大や東北大などとの共同研究で、上皮細胞と間葉細胞という2種類の細胞を組みあわせて歯のタネになる歯胚(しはい)を作製。プラスチック製の2.5ミリの小さな枠に入れてマウスの体内に埋め込んで培養し、歯周組織をともなった歯にまで成熟させた。
その後、マウスの歯茎に移植したところ、移植後40日程度で周囲の組織になじみ、神経や血管もつながって定着。モノをしっかりかめて、かんだ時の刺激や痛みも感じることができるなど、正常に機能することが分かった。
今までの歯の培養の実験と違うところは、
上皮細胞と間葉細胞から歯胚を作ったところです。
歯胚から歯を作る研究は今までにもありました。
この場合、歯胚を使った研究の場合どこから歯胚を用意するのかが問題になっていました。
歯の再生が必要なのはどちらかというと年輩の人になるので、年輩のかたの場合、歯胚はすでに歯になっています。
この研究では上皮細胞と間葉細胞から人工的に歯胚を作りだしているので、年輩の方でもその人の上皮細胞と間葉細胞から人工的に歯胚を作り、歯を再生することが可能になるかもしれません。
今後の研究の発展によっては入れ歯やインプラントが世の中からなくなるかもしれませんね。
今後の展開が楽しみです。