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2011.03.25

フッ化物使用に対する私の考え

フッ化物に対する虫歯予防の効果や利用方法、フッ化物の人体への影響などについて長々と書いてきました。

今日は中立的な立場を離れ、私見を述べたいと思います。

 

フッ化物は適正範囲で使用される限り、フッ素症を引き起こすことなく虫歯の予防効果が高いと思います。

特に、歯が生え始めた子供や、寝たきりになったお年寄りなど、虫歯になってもなかなか治療にお金を掛けることができない低所得のかたに対しては水道水のフッ化物濃度の調整の効果は高いと思います。

また、虫歯の治療に費やされる医療費とフッ化物の調整にかかる費用を比べるとフッ化物調整の費用のほうが安くて済みます。

ただ、コミュニティーに対する調整となると、住民全体の理解を得ることが必要となり、たとえ虫歯予防の効果が高くとも、添加するということに拒否感を持つ人が出るでしょう。

そして、実際には多くの住民はフッ素のことをよく知らない状態なので、特に水道水にフッ化物を添加する必要はないと考えると思います。

コミュニティーの住民の多くが求める状況にならない限り、水道水のフッ化物濃度調整は行われないと思います。

 

次に、学校単位のフッ化物洗口ですが、実際に実施するのは教職員です。

児童が誤って飲み込んだ時、教職員が手順を間違えたとき、フッ化物の取り扱いに誤りがあったとき、その責任の所在が問題となります。

実際には誤って飲み込んでも大丈夫なレベルで、フッ化物洗口による健康被害は考えなくてよいのですが、それを周知しても現場レベルではあまりやりたくないと考えていると思います。

日本人は間違えは許されないとか、ある一定確率でヒューマンエラーは起きるものであっても、たるんでいるとか考えがちです。

そしてエラーがあったとき、健康被害は出ないとわかっていても保護者からのクレームは発生するでしょうから、昨今のモンスターペアレンツへの対応に苦慮されている現場ではあえて悩みの種を増やしてくれるなと思っているでしょう。

ただ、永久歯が生え始めるときにフッ化物を利用すると虫歯の予防が効果的に行われるのは事実なので、学校単位でのフッ化物洗口は保護者、教職員、歯科医師、行政がコンセンサスをとりながら推進していくことが望ましいと思います。

 

水道水のフッ化物濃度調整や学校単位のフッ化物洗口も行われない場合は、各家庭レベルで虫歯予防をしていく必要があります。

人によっては日常的な口の中のフッ素濃度は低い状態にあるため、生活習慣によっては虫歯にかかりやすい状態にあるかもしれません。

歯科医師に相談し、歯科医院でのフッ素塗布なども利用しながら虫歯にかかりにくい状態を作ってください。

 

最後に、私としては水道水のフッ化物濃度の調整をぜひとも行ってほしいなと思っています。

自分の子供の歯が生え始めたころ、歯磨きするのも一苦労しました。

抑えつけて、無理やり口を開かせて歯磨きしていたのを思い出します。

もし、自分の意思が弱く抑えつけながら歯磨きなんてできないと思っていたら今頃こどもの口の中は虫歯があったかもしれません。

また、子供が歯磨きをいやがっていたころはお菓子を与えないようにしていましたが、もし砂糖が多く含まれたお菓子を与えていたら歯磨きを嫌がらなくなる前に虫歯を作っていたかもしれません。

診療をしていると子供が口を開けてくれないから歯磨きができないという保護者の方、ほしがるからお菓子を無制限に与えている保護者の方を見かけることがあります。

その多くの場合子供の口の中に虫歯が多かったりします。

こういった保護者を責めるのは簡単ですが、子供が悪いわけではありませんので、こういった子供でも虫歯が少なくなればそれにこしたことはありません。

こども以外でも認知症の方、手が不自由な方はなかなか上手に歯磨きができません。

そういった方にとっても水道水を飲めばある程度虫歯が予防できるので、福祉の観点からも良い方策と思います。

実施する自治体が出てきてくれれば良いなと思います。