U-15 ジュニアラグビーのマウスガード義務化
日本ラグビーフットボール協会が5月19日に出したルール変更により、
U-15のジュニアラグビーの選手はマウスガードの着用が義務化されました。
これは4年の準備期間を経た上での正式実施です。
日本ラグビーフットボール協会の認識として。成長期にあるU-15のプレーヤーにはマウスガード装着による安全対策は欠かせないということだそうです。
マウスガード装着による安全対策は欠かせないということならいっそのこと、ラグビーを行うすべてのプレーヤーというように変更すればいいのにと思います。
咬み合わせと重心
咬み合わせの不正にはいろいろなタイプがあります。
この不正の状態と重心の位置を確かめた研究があります。
Nobili a., Adversi R.
Relationship between posture and occlusion: a clivical and experimental investigation.
J Craniomandib Pract 14: 274-285, 1996
という論文です。
内容は、
上顎前突の人の重心は前方に、
下顎前突の人の重心は後方にずれているというものです。
ちなみに私は上顎前突ですが、
Wii Fitで重心の位置を見てみると前方重心でした。
論文データ通りです。
重心の位置は立位で行うスポーツに影響すると思われます。
ゴルフのアドレスとか特に影響しそうですね。
歯科で処方される薬とドーピング
オリンピックが開催されている時、しばしば「ドーピングにより失格」というニュースが流れます。
ドーピングには競技力を向上させるために故意に禁止薬物を使用する場合と、
病気による薬の服用などで意図せずに摂取している場合があります。
ただ、意図せずに摂取している場合でも検査にかかれば失格になります。
禁止薬物には色々なものがあり、中には歯科で処方される薬物で禁止薬物に指定されているものもあります。
歯科で処方されたり、使用されるものでは
カフェインを含む鎮痛剤
ステロイドを含む消炎剤
麻黄を含む漢方薬
があります。
また、局所使用のみ許可されているものとして
ステロイドを含む消炎剤
局所麻酔薬
あります。
局所使用で使われる場合は、歯科医師に診断名や治療方法を証明する証明書を記載してもらい、提出する必要があります。
ドーピング検査のある競技会に出場される場合は歯科治療と言えどドーピングに引っかかる可能性があるので、治療の際には歯科医師にお問い合わせください。
トップアスリートのメディカルチェック
スポーツの日本代表候補選手と言えばそれぞれ国内ではトップクラスの選手であると考えられます。
現役の選手の多くはできればトップクラスの選手になることを目指していると思います。
日本代表候補選手になるとメディカルチェックを受けることが義務付けられています。
このメディカルチェックはどのようなものがあるかご存知でしょうか?
メディカルチェックの内容は
血液検査、生化学検査、尿検査、胸部X線写真、安静時心電図などの内科系、
骨、関節、筋肉、腱の状態を体の各部位ごとにチェックする整形外科系、
が良く知られています。
実はこれら内科系、整形外科系の項目以外に歯科系の項目についてもチェックを受けています。
代表候補選手となればハードなトレーニングをこなし、競技種目に適した体を作っていく必要があります。
体を作るためには適切に栄養素を摂る必要があり、そのためには適切に食事が摂れることが重要です。
適切な食事の摂取には虫歯や歯周病の無い健康な口の機能がかかせません。
また、競技のシーズン中に虫歯や歯周病が悪化すれば競技に集中できず、良い成績を残せなくなります。
トップの選手は口の中の管理も良好です。
また、シーズン終了時、シーズン開始前に定期的に歯科検診を受けている選手も多いです。
スポーツで上を目指す選手はお口の中のケアにも心掛けていただければと思います。
マウスガード -スポーツの記事から
スポニチの記事からです。
マー君 迫力黄色マウスピースで開幕つかむ!
楽天の田中投手は黄色のマウスガード(マウスピース)を使用しているのですね。
記事にはその他にも日本ハム・ダルビッシュ投手が使用していることが書いてありました。
マウスガードの使用と野球の競技能力向上の関係はいまだ良くわかっていません。
マウスガード装着によって背筋力などは向上することが示されていますが、これは静的な状態での計測ですし、試合中はバッターにせよピッチャーにせよ動的な状態で一連の動作として運動しています。
筋力だけでなく、速度、動きの滑らかさ、重心の変化、視力、安定性など色々なファクターが様々なバランスで関与しています。
総合的に能力が向上しなければ、筋力だけが向上しても効果的とはいえません。
プロ野球連盟と日本スポーツ歯科医学会が共同でしっかりとした研究を行い、
関連があるのかないのか、
ある場合はどのような形態のマウスガードが良いのか、
どのような能力の向上が得られるのか、
マウスガードを利用しながらどのようなトレーニングを行うのが効果的か
といったことが示されるといいですね。
連盟が無理としてもどこかのチームが将来の投資と思って今のうちに二軍や育成中の選手を対象として研究を始めるのも面白いかもしれませんね。
咬合力と運動能力
8020推進財団という組織が
歯を大切にしてスポーツを楽しく
という冊子を発行しています。
その冊子の中に先日ブログで書いた咬合力についての記事がありました。
「運動能力が高い小学生は噛む力も強い」
という記事です。
小学生を対象にしたデータで、咬合力の高い児童の方が懸垂や50m走の記録も優れているというものです。
先日書いたとおり、咬合力は歯並びや咬み合わせに密接に関連しています。
歯並びやかみ合わせを整えることで運動能力が向上が期待できるかもしれません。
日本スポーツ歯科医学会での発表で、プロやアマチュアスポーツのレギュラークラスと控えの選手の口の中の状態を比較したものがあります。
レギュラークラスの選手は控えの選手に比べ虫歯が少なく、咬み合わせも良い人が多いです。
また、レギュラークラスの選手はまめにお口の管理を受けているようです。
将来プロスポーツ選手を目指す人、長くスポーツを楽しみたい人は、定期的なお口の管理とかみ合わせの治療を検討してみてはいかがでしょうか。
矯正治療中のスポーツ外傷
以前、前歯が出ているとスポーツでケガしやすいという話を書きました。
今回は矯正治療中のスポーツのケガの話です。
矯正治療では歯の表面にブラケットをつけることが多いです。
多くのケースでは歯の外側のくちびるや頬と接する面にブラケットがついています。
ブラケットの角はできるだけ滑らかに作っていますが、不意の衝撃でくちびるや頬を切る場合があります。
1998年に出された高校生のクラブ活動での口のケガに関する論文で、
矯正治療中の生徒では口のケガが多くなると発表されています。
これはサッカー、レスリング、バスケットボールの選手を対象とした論文です。
レスリングでケガが増えるのは想像に難しくないのですが、サッカーやバスケットボールなど選手同士が接触する可能性のあるスポーツでも高くなっています。
このことから、他のスポーツでも選手同士が接触する可能性のあるスポーツでは矯正治療中の選手は口のケガをしやすいと考えられます。
口のケガが矯正装置で増えるなら、その矯正装置をマウスガードでカバーすれば口のケガの予防は可能です。
矯正治療中のスポーツ選手はなるべくマウスガードを装着してください。
上顎前突とスポーツ外傷
久しぶりにマウスガードやスポーツ外傷に関わるお話です。
コンタクトスポーツ、球技、レースなどでは、転倒や激突時に歯を折ったり、脱臼したり、くちびるを切ったりすることがあります。
ところで、スポーツをしているときに、歯やくちびるをけがしやすい歯並びがあります。
上顎前突(出っ歯)です。
1993年に発表された外国の論文に、
「上の前歯が下の前歯より4mm以上出ている人、上くちびるが短い人、口をポカーンと開けている人、口で呼吸をする人は歯やくちびるのけがが多い。」
「上の前歯と舌の前歯の距離が4mmの人は2mmの人の2倍ケガをしやすく、10mm以上ある人の29.4%がケガをしている。」
という報告があります。
コンタクトスポーツ、球技、レースをする人で、上の前歯が出ている人は矯正治療をお勧めします。
脳震盪
脳震盪(のうしんとう)は頭やあごに衝撃が加わったときに、脳に起こる機能障害です。
脳震盪の症状でよくイメージされるのは意識障害とふらつきですが、他に頭痛や記憶障害なども起こります。
脳震盪はかなり危険なもので、意識を失うほどの脳震盪を起こした後にすぐにまた脳に衝撃が加わると、場合によっては死に至ります(セカンドインパクトシンドローム)。
意識を失うほどの脳震盪を起こした後は、脳が回復するまでプレーを控えた方が良いのです。
あごに衝撃が加わったときに、マウスガードを装着していれば衝撃の脳への伝達はかなりの確率で防ぐことができます。
しかし、市販のマウスガードは歯科医院で作ってもらうマウスガードに比べて外れやすいため、衝撃が加わったときマウスガードが外れることなく衝撃を緩和してくれるかどうかは疑問です。
人とぶつかったりする可能性のあるスポーツでは安心して競技するためにもマウスガードを装着してほしいです。
スポーツによる骨折と親知らず
スポーツ中に人やボールなどがあごにぶつかった場合、下あごが骨折することがあります。
今回は下あごの骨折と下の親知らずについてです。
下の親知らずがあるのになかなか生えてこない場合、親知らずが生える隙間がない場合があります。
そういった下の親知らずは斜めを向いたり、真横を向いていたりします。
赤の矢印で示した歯が親知らずです。
親知らずが斜めになって、骨の中に埋まっています。
こういった状態のとき、下あごに衝撃が加わると骨折を起こしやすくなります。
歯の一番硬い部分のエナメル質は、歯の根っこの部分と違い、骨にひっついていません。
そのため、骨に衝撃が加わったとき、強度的に弱いエナメル質と骨の境目に沿って骨折しやすくなるのです。
人とぶつかりあうコンタクトスポーツをされるかたは、シーズンオフのときに歯科医院で親知らずのチェックをしてもらってはどうでしょうか。