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2011.03.01

エックス線 3

エックス線の3回目です。

エックス線が放射線の一種であることを以前書きました。

放射線はその強度や被曝した時間、回数によって人体に悪影響を及ぼすことがあります。

エックス線も同様に、強いエックス線を何度も浴びれば体に不調が出てくるでしょう。

 

エックス線被曝による病気としては、

強いエックス線を浴びることで

悪心、嘔吐・下痢、発熱、血小板減少、出血、白血球減少などの急性障害が出たり

エックス線を繰り返し浴びることで

再生不良性貧血、白血病、肺癌、皮膚炎、皮膚がん、白内障、免疫障害、不妊症などの晩発性障害になったりすることがあります。

 

こういった内容を書くと、エックス線検査はこわいとか、今日10枚もエックス線写真を撮られたけど病気になるんじゃないかとか思われるかもしれません。

しかし、エックス線検査程度の被曝量で病気になる確率はほとんど0に近い(0であるとはいいません)と考えられます。

 

エックス線の大きさを表す単位にGy(グレイ)とSv(シーベルト)があります。

グレイは放射線のエネルギーがどれだけ物質に吸収されたかを表します。

人に置き換えると、放射線をあてて、どのぐらい人体や臓器が吸収したかと考えてください。

一方シーベルトは、被曝の生体に対する影響を議論するために使用される単位です。

グレイとシーベルトの関係は

Gy = 放射線荷重係数(放射線の種類による生体への影響を表す定数)× Sv

となっています。

この放射線荷重係数はエックス線では1、α線では20となっています。

つまり、同じ大きさのα線とエックス線ではα線のほうが20倍生体に対する影響が強くなります。

 

では歯のレントゲンではどうなっているのでしょう。

歯のレントゲン写真で約2mGyのエックス線が頬の皮膚に浴びせられます。

皮膚の場合、障害が出始める放射線量は2000mGyから5000mGyです。

つまり、一度に1000枚以上のレントゲン写真を撮れば皮膚症状が出始めるかもしれません。

おそらくほとんどの人にとっては、生涯のエックス線写真による放射線量は皮膚に障害が出始める放射線量以下になっているでしょう。

 

最近のレントゲン写真はデジタル化がすすみ、撮影時の放射線量もどんどん減少しています。

エックス線検査による人体への影響は考えなくても良いと思われます。

2011.02.26

エックス線 2

エックス線2回目です。

エックス線には物質を透過する能力があります。

しかし、エックス線にも透過しやすい物質と透過しにくい物質があり、その違いによって物質の内部の構造を知ることができるのです。

たとえば、歯のエックス線写真の場合、

金属はエックス線を通しにくく、

次に、プラスチック製のつめものや神経を取り除いたあとのつめものもエックス線を通しにくく作られています。

歯は、エナメル質の部分が一番エックス線を通しにくく、神経の入っている部分はエックス線が通りやすくなっています。

歯を支える歯根膜はエックス線を通しやすくなっています。

エックス線を通しやすい部分は黒くなり、エックス線を通しにくい部分は白くなります。

そうして、上のようなエックス線写真が出来上がります。

正常な状態にくらべ、エックス線を通しやすい部分に白いものがあったり、エックス線を通しにくい部分が黒く抜けていたりすると、異常があることがわかります。

このように物質を通過しやすいエックス線ですが、必要でない部分に影響しないようにする必要があります。

エックス線を通さないようにしようとすると、コンクリートなら約50cm、鉛なら10cmの厚みが必要になります。

エックス線を撮影する部屋は外にエックス線が漏れ出さないようにガラスに鉛を混ぜたりして工夫がされています。

また、体の他の臓器に影響しないように鉛の入った防護服を患者さんに来てもらったりして工夫をしています。

続きます。

 

2011.02.25

エックス線

エックス線についてです。

矯正に関するX線の話をすべて書き込むと長くなるので、数回に分けてお送りします。

世の中には放射線というものがあります。

放射線は非電離放射線と電離放射線の2種類に分類されます。

非電離放射線は近紫外線、可視光、赤外線、マイクロ波や低周波のように、エネルギーを持っているが、物質に衝突しても原子や分子を電離させるほどの力がない光線や電波のことです。

一方、電離放射線は物質に衝突すると原子や分子を電離させる高いエネルギーを持った粒子線や電磁波のことをいいます。

世の中の人が考える放射線はこの電離放射線の方です。

電離放射線には粒子線と電磁放射線があります。

粒子線はアルファ線、ベータ線、陽子線、重荷電粒子線、電子線、中性子線、宇宙線があります。

電磁放射線にはガンマ線とエックス線があります。

この辺の話になると高校の化学を思い出しますね。

エックス線とガンマ線はどのようにして発生したかによって区別されています。

エックス線は物質を透過する能力が強く、物質内部の構造を確かめるのに利用されています。

つづく

2011.02.17

歯科の標榜と歯学部教育

おはようございます。

木曜の定休日です。

宮崎は小雨。

新燃岳周辺で土石流が起きないことを願っています。

 

さて、本日も硬いタイトルでお送りしています。

 

医院・歯科医院で看板に掲げる診療科目を標榜(ひょうぼう)といいます。

医科だったら内科、外科、産科・婦人科などなど。

歯科で認められているのは歯科、矯正歯科、小児歯科、歯科口腔外科です。

では大学での研究や講義はどのように別れているのでしょうか。

私の出身大学は鹿児島大学ですが、鹿児島大学の医学部では臨床系研究室は23に分かれていて、内訳は、

内科学第一、内科学第二、内科学第三、リハビリテーション医学 、神経精神医学、小児科学、皮膚科学、放射線医学 、臨床検査医学、臨床薬剤学 、心身医療学、外科学第一 、外科学第二、脳神経外科学、整形外科学、泌尿器科学 、眼科学、耳鼻咽喉科学、産婦人科学、麻酔・蘇生学 、小児外科学、医療情報管理学 、医療総合科学

となっています。

それぞれの名前を見れば医科の診療内容、さらに言えば医科の標榜科目に多くが則していることがわかります(臨床薬剤学、医療情報管理学 、医療総合科学を除く)。

 

一方歯学部では臨床系研究室は12に分かれていて、

予防歯科学 、歯科矯正学 、小児歯科学 、歯科保存学 、歯周病学 、咬合機能補綴学 、口腔顎顔面補綴学 、顎顔面疾患制御学 、口腔顎顔面外科学 、顎顔面放射線学 、歯科麻酔全身管理学 、歯科医学教育実践学となっています(これは鹿児島大学の研究室名です。大学によって研究室名は異なります。)。

これを標榜科目と対応させると、

歯科(予防歯科学、歯科保存学 、歯周病学 、咬合機能補綴学 、口腔顎顔面補綴学、顎顔面放射線学 、歯科麻酔全身管理学)

矯正歯科(歯科矯正学、顎顔面放射線学)

小児歯科(小児歯科学、顎顔面放射線学 、歯科麻酔全身管理学)

歯科口腔外科(顎顔面疾患制御学 、口腔顎顔面外科学 、顎顔面放射線学 、歯科麻酔全身管理学)

になります。

歯科麻酔全身管理学は診療に麻酔を用いるところ、顎顔面放射線学はX線撮影する診療科目すべてに関与してきます。

研究室名や研究室数は大学によって異なりますが、分け方の傾向は似ています。

そうして眺めてみると、歯科という標榜名がカバーする範囲が広いことがわかります(逆を言えば医科にくらべ歯科は細分化されているという表現が正しいのかもしれませんが)。

2011.02.15

保険で矯正治療が可能な医療機関

歯科治療を受けるとき、一般的には保険医療機関でなら保険で治療することができます。

この保険医療機関は申請を行い、認可がおりてはじめて保険で診療をすることができます。

そのため、保険医療機関の申請を行っていない、認可を受けていない、認可を取り消された医療機関では保険診療はできません。

では、保険医療機関の認可を受けている歯科医院において、保険での治療を認められているすべての診療を保険で治療することができるのでしょうか。

答えは条件付きで保険診療が可能です。

保険診療にはある設備や体制を整えた医療機関でのみ保険で診療することができる特別な治療があります。

その治療に関わる保険料を特掲診療料といいます。

矯正の特掲診療料には歯科矯正診断料と顎口腔機能診断料があります。

歯科矯正診断料、顎口腔機能診断料ともに、厚生労働大臣が定めた施設を備えた保険医療機関が申請を行い、認可された場合に算定することができます。

 

歯科矯正診断料は、唇顎口蓋裂、ダウン症候群、クルーゾン症候群など先天異常やシンドロームによる咬合異常に係わる保険点数で、この算定に関わる診療を行い、算定しないとその後の矯正治療ができません。

この施設基準は常勤の矯正治療を行う歯科医師がいて、セファロ撮影の装置があり、手術を行う場合は手術を行う医療機関と提携していることが必要となります。

早い話が、セファロ撮影装置がないと歯科矯正診断料が算定できませんので、そのような医療機関では唇顎口蓋裂、ダウン症候群、クルーゾン症候群など先天異常やシンドロームによる咬合異常の患者さんを保険で治療することは不可能(自費なら可能)になります。

 

顎口腔機能診断料は顎変形症患者さんに関わる保険点数で、この算定に関わる診療を行い、算定しないと顎変形症患者さんの保険を使った矯正治療ができません。

この施設基準は常勤の矯正治療を行う歯科医師と、常勤の看護師または衛生士がいて、セファロ撮影の装置、下顎運動検査機器、咀嚼筋筋電図検査機器があり、手術を行う医療機関と提携していることが必要となります。

上の歯科矯正診断料の施設基準よりさらに厳しくなり、セファロ撮影装置のみならず、下顎運動検査機器、咀嚼筋筋電図検査機器まで揃えないと顎口腔機能診断料が算定できません。そのような医療機関では顎変形症の患者さんを保険で治療することは不可能(自費なら可能)になります。

ここで、問題になってくるのが、矯正治療を行う医療機関が顎口腔機能診断料の認可を受けていない医療機関で、手術は別の医療機関で行う場合、矯正治療は保険がきかないですが、このとき手術についても保険で行うことができなくなります。保険で手術できないとなると、高額療養費の適用も受けられませんので、自己負担となる治療費総額は莫大なものとなります。

 

矯正専門で開業している医療機関は歯科矯正診断料の認可を受けている医療機関が多いですが、顎口腔機能診断料に関しては検査機械がかなり高額になるため申請をしていない医療機関もあります。

また、一般歯科で開業されている医療機関で、看板に矯正歯科を掲げている場合でもセファロ撮影装置を備えていない医療機関が多いです。

唇顎口蓋裂、ダウン症候群、クルーゾン症候群など先天異常やシンドロームによる咬合異常や、顎変形症の患者さんで保険での矯正治療を希望される場合は歯科矯正診断料と顎口腔機能診断料の算定できる医療機関に通院してください。

2011.02.11

マウスガード  -スポーツの記事から

スポニチの記事からです。

 

マー君 迫力黄色マウスピースで開幕つかむ!

楽天の田中投手は黄色のマウスガード(マウスピース)を使用しているのですね。

記事にはその他にも日本ハム・ダルビッシュ投手が使用していることが書いてありました。

マウスガードの使用と野球の競技能力向上の関係はいまだ良くわかっていません。

マウスガード装着によって背筋力などは向上することが示されていますが、これは静的な状態での計測ですし、試合中はバッターにせよピッチャーにせよ動的な状態で一連の動作として運動しています。

筋力だけでなく、速度、動きの滑らかさ、重心の変化、視力、安定性など色々なファクターが様々なバランスで関与しています。

総合的に能力が向上しなければ、筋力だけが向上しても効果的とはいえません。

プロ野球連盟と日本スポーツ歯科医学会が共同でしっかりとした研究を行い、

関連があるのかないのか、

ある場合はどのような形態のマウスガードが良いのか、

どのような能力の向上が得られるのか、

マウスガードを利用しながらどのようなトレーニングを行うのが効果的か

といったことが示されるといいですね。

連盟が無理としてもどこかのチームが将来の投資と思って今のうちに二軍や育成中の選手を対象として研究を始めるのも面白いかもしれませんね。

2011.02.10

咬むことの重要性

木曜日、定休日です。

しかし仕事をたくさん残っているので休日出勤です。

宮崎は薄曇。

昨晩の「ためしてガッテン」で咬むことの重要性について放送されていました。

以前このブログでも述べました歯根膜の感覚受容の話から、

さらに咀嚼が脳の活性化につながるという話まで、

なかなか面白い内容でした。

実際、眠い時はガムを咬んだりしていると少し眠気がおさまります。

どんな咬み応えの食材でもしっかりと自分の歯で咬めることは重要です。

学生時代、咬める入れ歯を手に入れた患者さんが何でも食べることができると喜んでいたことを思い出します。

自分の歯で何でもずっと食べられるようにするには虫歯や歯周病にかからず、しっかりお口の中を保つことが必要です。

皆さんのお口の中が良い状態で保たれますようにと思います。

(できれば定期的にお口の手入れを受けてくださいね)

2011.02.09

ホワイトニング 6. その他

その他の歯を白くする方法についてです。

歯をぶつけたりして神経が死んでしまうと歯が黒く変色してくる場合があります。

こうなると神経を除去し、神経の入っていた穴をきれいにして中に詰め物をする必要があります。

このような歯の色を白くするために、神経の穴の処理をしっかりしたあと歯の中から漂白する場合もあります。

 

薬の影響によって歯が変色している場合、

漂白などでは患者さんがのぞむ歯の色にすることは難しいです。

そのようなとき、神経が生きている歯では歯の表面を薄く削ってラミネートベニアを貼り付けたり、

神経が死んでいる場合は補綴で歯の色を整えます。

 

ここまで6回に分けてホワイトニングについて書いてきました。

このシリーズは今回で終了です。

2011.02.08

ホワイトニング 5. 修復

ホワイトニングの5回目です。

 

以前にも書きましたが、人工物にはホワイトニングの効果が及びません。

もともと人工物は周囲の歯の色に合わせて作られるので、周囲の歯をホワイトニングによって白くした場合、修復物の色だけ元の周囲の色のままになります。

 

そこで必要になるのが修復物を新しくやりなおすことです。

 

プラスチックの詰め物の場合、

詰め物を除去し、

プラスチックを新しい歯の色に合わせて詰め、

光を当てて固め、

最後に磨いて完成です。

かぶせものの歯の場合は少し大変で、

かぶせものを除去し、

型どりと色合わせをして、

完成した新しいかぶせものを入れます。

このように、手間と費用がかかりますので、白い歯を手に入れたいという希望のある人は虫歯などを作らないようにしていただければと思います。

2011.02.07

ホワイトニング 4. 歯のコーティング

歯のホワイトニングシリーズ4回目です。

 

歯の表面からのホワイトニングでどうしても白くならない歯というものがあります。

たとえば、薬の副作用で変色した歯、神経が死んで変色した歯、修復物が入っている歯などです。

神経が死んで変色した歯は歯の中から漂白していけば白くなります。

修復物の入っている歯は修復物をやり直せば歯を白く見せることも可能です。

薬の副作用で変色した歯は、虫歯のない健全な歯でも白く見せようとすると歯の表面を削ってラミネートべニアなどを貼り付けるといった治療になります。

 

いずれの方法も短時間でというのは難しく少し時間がかかります。

 

ごく短時間で白く見せたいときなどに使用される方法として、歯のマニキュアとかコーティングといわれる方法があります。

 

これは歯の表面に白いコーティング材を薄く一層盛り足して、元の歯より白く見せる方法です。

1,2回の来院で白く見せることができる簡単な手法なのですが、衝撃に弱いため、一時的な方法と考えていただいた方が良いです。

ただし、急な用件で一時的でも良いので歯を白くしたい場合に有効です。

このコーティングは金属の上にも施すことができますが、咬む面には使えませんので、下の歯には使えないと考えてください。

株式会社松風 ビューティーコートのカタログから写真転載

 

 

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