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2011.05.18

歯科ドック

矯正専門で開業していますが、なぜか歯科ドックも行っています。

もともと、宮崎市郡東諸県郡歯科医師会に入会した時に、「歯科ドックを行いますか?」と聞かれ、何も考えずに「はい」と返事したため、実施医療機関のリストに載っています。

 

昨年は一人も来られなかったので、今年も一人も来ないかもと思っていたら何人かのかたがいらっしゃっています。

 

歯科ドックを受けられた方はご存知と思いますが、

虫歯や歯周病の罹患状況、

虫歯のなりやすさ、

咬み合わせやあごの関節の状態、

口の中の粘膜や舌の異常の有無、

など色々と診ています。

 

特に、虫歯の原因菌が多いかどうか、虫歯の原因菌から出る酸を唾がしっかりと薄めてくれるかどうか、口の中に出血がないかなど、色の変化でわかるので、見ていておもしろいです。

 

少し自己負担がありますが、お口の中の環境を整えることは生活の質の向上につながります。

行政からのお知らせを受け取られた方は一度受診されて見てはいかがでしょうか。

2011.05.13

歯科で処方される薬とドーピング

オリンピックが開催されている時、しばしば「ドーピングにより失格」というニュースが流れます。

ドーピングには競技力を向上させるために故意に禁止薬物を使用する場合と、

病気による薬の服用などで意図せずに摂取している場合があります。

ただ、意図せずに摂取している場合でも検査にかかれば失格になります。

 

禁止薬物には色々なものがあり、中には歯科で処方される薬物で禁止薬物に指定されているものもあります。

歯科で処方されたり、使用されるものでは

カフェインを含む鎮痛剤

ステロイドを含む消炎剤

麻黄を含む漢方薬

があります。

 

また、局所使用のみ許可されているものとして

ステロイドを含む消炎剤

局所麻酔薬

あります。

局所使用で使われる場合は、歯科医師に診断名や治療方法を証明する証明書を記載してもらい、提出する必要があります。

 

ドーピング検査のある競技会に出場される場合は歯科治療と言えどドーピングに引っかかる可能性があるので、治療の際には歯科医師にお問い合わせください。

2011.04.16

線量計

歯科医師はレントゲン写真を撮ります。

レントゲン写真は、放射線で撮像するため、日常的に放射線を取り扱っていることになります。

そのため、原子力発電所で働く人たちと同様に、放射線被曝量をコントロールする必要でてきます。

放射線被曝の蓄積量を知るため、歯科医師は線量計やフィルムバッジと呼ばれるものを携帯する必要があります。

私が持っているのはポケット線量計です。

もっとも、この線量計は積算値が9999μSvを越えるとふりきれてしまいますが。

2011.04.12

歯科医師の歯の呼び方

歯科医師はそれぞれの歯に記号や数字をつけて読んでいます。

 

永久歯の場合、一番前の歯が1、糸切り歯が3、6歳臼歯が6、12歳臼歯が7、親知らずが8、

乳歯は前からABCDEというようにしています。

数字や記号の前に、右上、左上、右下、左下をつけ、

右上6番に虫歯(カリエス)とか、左下8番が半埋伏で腫れている(ペリコ)とか言っていたりします。

2011.04.11

歯の生え換わり

歯が生え換わるとき、乳歯がぐらぐらし始めてから生え換わります。

乳歯がぐらぐらし始める時、永久歯が伸びてきて乳歯の歯根に当たり、乳歯の歯根が溶かされてどんどん短くなっていきます。

上のレントゲンの左側は乳歯の歯根が短くなる前、右は永久歯が伸びてきて乳歯の歯根が短くなってきているところです。

 

乳歯の歯根が短くなると、歯を支える部分が少なくなるためにぐらぐらし始め、最終的には乳歯が抜け落ちます。

 

しかし、時には永久歯が乳歯の歯根の方へ向かわず、ずれていることがあります。

上のレントゲン写真は永久歯が乳歯の歯根とずれているため、乳歯の歯根が溶かされず、残ったままになっています。

こういった場合、早めに乳歯を抜歯しないと永久歯がずれて生えてしまいます。

 

また、乳歯の下に永久歯が存在しない場合、

上のレントゲンは成人のものですが、永久歯が先天欠損のため乳歯の歯根が溶かされずに残っています。

このように永久歯が存在しない場合は、虫歯や歯周病にかからなければ乳歯が長く残ります。

歯が生え換わらないとき、何かの原因があることが多いので、気になるときは早めにご相談ください。

2011.03.29

ボトックス注射

ボトックス治療というものがあります。

ボツリヌス菌由来の毒素を注入してシワの改善を行うなどアンチエイジングの治療として脚光を浴びています。

ボツリヌス毒素は神経毒素で、神経をマヒさせる作用があります。

もともと神経の異常な活動に伴う痙攣などに使われていたのですが、表情筋などに用いることで筋肉の働きを抑制し、シワができるのを改善するといった利用がされています。

 

このボツリヌス注射を審美歯科で使用するところが増えてきています。

ほうれい線やガミースマイルの改善に使用されているようです。

くちびるへの使用ならわかりますが、ほうれい線周囲への適用は歯科の範疇を越えていないかどうか心配になります。

形成外科と審美歯科が併設されているところなら大丈夫かな。

 

今後の展開が気になります。

2011.03.28

歯科医師国家試験

2011年の歯科医師国家試験の合格発表が3月22日に行われました。

私が受けたころの歯科医師国家試験(国試)は90%をやや切る程度の合格率で、普通に勉強していれば合格するという雰囲気でした。

そのころから歯科医師は過剰であるという認識はなされていましたが、国立の入学定員をわずかに減らすという対処のみでした。

その後、国試の合格率は下げられ、今では合格率の平均が70%前後になっています。

 

 

特に1度でも国試に落ちたことのある人(国試浪人)にとっては狭き門(合格率30%前後)となっています。

 

大学にとっても国試の合格率は大学の歯学教育の質を問われるので、合格率をいかに上げるかが課題となっています。

ただ問題は新卒の場合は目が届きやすく、ある程度の合格率が見込めるのですが、国試浪人については大学の目が届かないので、国試浪人が増えると必然的に大学単位の合格率が下がっていきます。

DESのデータ参照

そこで、いかに新卒の合格率をあげ、国試浪人を作らないようにキープし続けるかが重要になります。

新卒の合格率をあげるため、卒業認定を厳しくし、国試浪人になりそうな人は卒業させないようにしたり、

6年生に対してはあまり実習や講義を行わず、国試の勉強を行う時間がとれるように配慮したりするところも増えています。

大学教育というよりはむしろ予備校のようになっていますが。

 

自分の時は6年生の実習期間が過ぎても症例が足りず、2月下旬まで追加で臨床実習をしていました。

時代が変わったなと思います。

2011.03.25

フッ化物使用に対する私の考え

フッ化物に対する虫歯予防の効果や利用方法、フッ化物の人体への影響などについて長々と書いてきました。

今日は中立的な立場を離れ、私見を述べたいと思います。

 

フッ化物は適正範囲で使用される限り、フッ素症を引き起こすことなく虫歯の予防効果が高いと思います。

特に、歯が生え始めた子供や、寝たきりになったお年寄りなど、虫歯になってもなかなか治療にお金を掛けることができない低所得のかたに対しては水道水のフッ化物濃度の調整の効果は高いと思います。

また、虫歯の治療に費やされる医療費とフッ化物の調整にかかる費用を比べるとフッ化物調整の費用のほうが安くて済みます。

ただ、コミュニティーに対する調整となると、住民全体の理解を得ることが必要となり、たとえ虫歯予防の効果が高くとも、添加するということに拒否感を持つ人が出るでしょう。

そして、実際には多くの住民はフッ素のことをよく知らない状態なので、特に水道水にフッ化物を添加する必要はないと考えると思います。

コミュニティーの住民の多くが求める状況にならない限り、水道水のフッ化物濃度調整は行われないと思います。

 

次に、学校単位のフッ化物洗口ですが、実際に実施するのは教職員です。

児童が誤って飲み込んだ時、教職員が手順を間違えたとき、フッ化物の取り扱いに誤りがあったとき、その責任の所在が問題となります。

実際には誤って飲み込んでも大丈夫なレベルで、フッ化物洗口による健康被害は考えなくてよいのですが、それを周知しても現場レベルではあまりやりたくないと考えていると思います。

日本人は間違えは許されないとか、ある一定確率でヒューマンエラーは起きるものであっても、たるんでいるとか考えがちです。

そしてエラーがあったとき、健康被害は出ないとわかっていても保護者からのクレームは発生するでしょうから、昨今のモンスターペアレンツへの対応に苦慮されている現場ではあえて悩みの種を増やしてくれるなと思っているでしょう。

ただ、永久歯が生え始めるときにフッ化物を利用すると虫歯の予防が効果的に行われるのは事実なので、学校単位でのフッ化物洗口は保護者、教職員、歯科医師、行政がコンセンサスをとりながら推進していくことが望ましいと思います。

 

水道水のフッ化物濃度調整や学校単位のフッ化物洗口も行われない場合は、各家庭レベルで虫歯予防をしていく必要があります。

人によっては日常的な口の中のフッ素濃度は低い状態にあるため、生活習慣によっては虫歯にかかりやすい状態にあるかもしれません。

歯科医師に相談し、歯科医院でのフッ素塗布なども利用しながら虫歯にかかりにくい状態を作ってください。

 

最後に、私としては水道水のフッ化物濃度の調整をぜひとも行ってほしいなと思っています。

自分の子供の歯が生え始めたころ、歯磨きするのも一苦労しました。

抑えつけて、無理やり口を開かせて歯磨きしていたのを思い出します。

もし、自分の意思が弱く抑えつけながら歯磨きなんてできないと思っていたら今頃こどもの口の中は虫歯があったかもしれません。

また、子供が歯磨きをいやがっていたころはお菓子を与えないようにしていましたが、もし砂糖が多く含まれたお菓子を与えていたら歯磨きを嫌がらなくなる前に虫歯を作っていたかもしれません。

診療をしていると子供が口を開けてくれないから歯磨きができないという保護者の方、ほしがるからお菓子を無制限に与えている保護者の方を見かけることがあります。

その多くの場合子供の口の中に虫歯が多かったりします。

こういった保護者を責めるのは簡単ですが、子供が悪いわけではありませんので、こういった子供でも虫歯が少なくなればそれにこしたことはありません。

こども以外でも認知症の方、手が不自由な方はなかなか上手に歯磨きができません。

そういった方にとっても水道水を飲めばある程度虫歯が予防できるので、福祉の観点からも良い方策と思います。

実施する自治体が出てきてくれれば良いなと思います。

2011.03.23

フッ化物の虫歯予防のメカニズム

フッ化物を使用するとなぜ虫歯が予防されるのでしょうか。

フッ化物の虫歯予防は主に3つの働きによると考えられています。

1.歯の結晶に作用して、虫歯原因菌の出す酸に強い歯に変える
2.歯のエナメル質を強化したり、少し酸に溶かされた部分を元に戻す
3.虫歯原因菌の酸を出す活動を弱める
などです。

 

これを詳しく見ていきます。

歯の周囲に0.1~1.0ppmのフッ化物イオンがあると、虫歯原因菌によって酸が作られ歯の周囲の酸性度が強くなるとフッ化物イオンが歯が溶けだすのを抑制します。

そして、歯の周囲の酸性度が弱まり、中性ぐらいまで回復すると、溶けたエナメル質の結晶(ハイドロキシアパタイト)の部分をフルオロアパタイトという結晶となっておぎないます(再石灰化)。

このフルオロアパタイトは酸に強い結晶で、このような過程を経てフッ素の使用によって歯は酸に強い歯に変わります。

生えたばかりの歯は酸に弱く、虫歯になりやすい状態です。

時間とともに歯は酸に強くなっていく(エナメル質の成熟)のですが、フッ素は生えたばかりの歯にも早く作用してエナメル質を強化し、酸に対して強い歯に早く変ます。

虫歯は、原因菌が歯に付着し、糖質を分解し、酸を産生するために起こります。

フッ素は虫歯の原因菌が歯に付着すること、糖質を分解する酵素の働き、酸を産生することのそれぞれに作用すると考えられています。

また歯垢が付いている場合でも、口の中のフッ化物イオンの濃度が高いと、歯垢の中にフッ化物イオンが貯められ、歯垢の周囲が酸性になると、歯垢の中からフッ化物イオンが出てきて歯が溶けだすのを抑制したり、再石灰化を促進します。

 

このようにフッ化物には虫歯を効果的に予防する作用があります。

しかし、虫歯のない状態を維持するためには、口の中にフッ化物イオンがつねに存在する状態にする必要があります。

フッ化物を供給する手法は様々です。

どのように供給するかを考えられてみてはいかがでしょうか。

2011.03.22

集団に対するフッ化物使用の問題点

今まで述べてきたように、フッ化物を使用すれば虫歯の予防効果は高いです(虫歯が0になるわけではありません)。

しかし、ご家庭でフッ素入りの歯磨剤を使用したり、歯科医院でフッ化物を塗布する場合と違って、学校単位のフッ化物洗口や、地域単位の水道水フッ化物濃度調整の心理的障壁は高いと思います。

特に日本人の場合、安全な濃度とされていても食品添加物や農薬の使用に対する反応を見ているとフッ化物を使用する際の拒否反応は想像に難しくありません。

 

一般の人の考えるリスク認知は専門家の考えるリスク認知とは異なっています。

専門家の考えるリスクは純粋に、被害が出た時の大きさと被害が起きる確率で判断します。

一方、一般人のリスク認知の研究を行ったSolvicによると、一般の人は物事のリスクを考えるときに「恐ろしさ」と「未知性」で判断すると報告しています。

つまり、恐ろしいか、恐ろしくないか、知っているか、知らないかの2軸で考えるということです。

一般の人にとってリスクが低いと考えるのは「恐ろしくない」かつ「良く知っている」ことで、リスクが高いと考えるのは「恐ろしい」かつ「全く知らない」ことだそうです。

 

水道水のフッ化物濃度調整(フロリデーション)の場合、一般の人の認識はワクチンと同程度の恐ろしさで、あまり恐ろしく感じてはいないようですが、あまり知らないようです。

これが水道水のフッ化物濃度調整に対して反対する原因と考えられます。

 

集団のフッ化物洗口の場合も同様に、それを実施する教職員、受ける児童や保護者はフッ化物の使用についてあまり知らないことが問題であると考えられます。

 

実施を所管する自治体、歯科医師会は一般の人々へフッ化物のことをもっと知ってもらう必要があるのではないでしょうか。

一般の人々がフッ化物について良く知るようになれば、自転車に対するリスク認知になる日も来るかもしれません。

 

続きます。

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